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2023 NO.34

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日本の食で健康になる!

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進化する日本の菜食文化

世界的に健康志向が高まるなかで、プラントベースフードとしての精進料理が注目されている。
味わい深くて環境への配慮もある、古くから日本で育まれてきた菜食の魅力とは。

写真●栗原 論

ほおずきやひしの実、麩と海苔の揚げ物など、旬の野菜と料理を盛り込んだ皿「八寸」

精進料理は、野菜や海藻、きのこなどの植物性食品を用いた料理で、もともとは禅宗の僧の食事として生まれた。動物性由来の食材や、五葷(ニンニク、タマネギ、ネギ、ニラ、ラッキョウ)と呼ばれる香味野菜は使われない。これまではもっぱら寺院や専門料亭などで供されるのみだったが、菜食への関心の高まりとともに、近年は精進料理をカジュアルに楽しめるレストランやカフェが増えている。

東京都の六本木にある「宗胡」もそのひとつ。植物性料理を先導する世界のシェフ50人に選出された野村大輔さんが、オーナーシェフを務める。

「海外のシェフからは、調理法の多様さに驚かれます」と野村さんが語る通り、全12皿のコースは実に多種多彩だ。かぼちゃを使った蒸しものを〝shojinプリン〞の名で提供したり、あわび茸をステーキにしたりするなど、従来の精進料理にはなかったモダンなメニューが登場する。焼く、蒸す、煮る、揚げるといったさまざまな調理法を駆使した料理は、菜食につきまとう「ヘルシーだが味気ない」「質素」といったイメージを覆す。

もちろん、白胡麻を原料とした胡麻豆腐や、豆腐と野菜を混ぜ合わせて油で揚げた飛龍頭といった伝統的なメニューも出される。いずれも菜食で不足しがちなたんぱく質や油分を補うもので、日本の菜食文化の知恵が活かされている。

刻んだ大根や高菜の漬物を加えた味噌を、茄子とまこも茸に塗り焼いた前菜

胡麻豆腐、松茸、とうがんのすまし汁。だしは昆布だしと野菜だしのブレンド

崩した豆腐と山芋に、細かく刻んだごぼうやにんじん、きくらげを入れて揚げた飛龍頭

肉厚なあわび茸のステーキは、胡麻だれとわさびをつけていただく