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2023 NO.34

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日本の食で健康になる!

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古くて新しい
日本の大豆食品

寿司やてんぷら、蕎麦など、和食の味を支える醬油は、大豆から生まれる。
今も受け継がれる伝統の醬油づくりから、日本の食文化と大豆の深い関係を探ってみよう。

写真●佐々木孝憲

もろみを攪拌する「櫂入れ」の作業。粘度のあるもろみをまんべんなくかき混ぜるには、熟練の技が必要だ

良質なたんぱく質や脂質が豊富で、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどの栄養素がバランスよく含まれる大豆。スーパーフードとして健康志向の人に好まれてきたが、近年は代替肉の原料にも活用され、世界的に注目度が高まっている。

日本人はそんな話題の食材に、古くから親しんできた。大豆は、野菜中心の和食にあって、不足しがちなたんぱく質を補う貴重な存在。煮たり、煎ったりしても食べるほか、さまざまに加工した大豆食品が食卓を賑わせてきた。味噌や豆腐、納豆はその代表格。だが、なかでも醬油の重要性は別格で、この調味料のない和食など想像がつかないといっても過言ではない。

醬油は、13世紀に禅僧が伝えた味噌の製造過程で生まれ、工夫と改良を重ねながら、現在の赤黒く香ばしい醬油へと完成したとされる。発祥地の和歌山県湯浅町では、今も伝統的な製法による醬油づくりが行われている。

茹でた大豆と炒って砕いた小麦を混ぜて麴種をかけ、温度を一定に保ちながら3日間麴菌を繁殖させる。これに、大豆の茹で汁と塩を加えてもろみと呼ばれるもととなる液をつくり、木樽に入れて、1年半以上、さらに発酵させていく。この時に大切なのが、櫂入れという作業である。櫂という道具で攪拌させることで、発酵を促すのだ。醬油蔵に空調設備はなく、日々変化する気温の中でもろみの状態を確認し、櫂入れの頻度や時間を調整する。

こうして熟成させたものを布で包んで絞り、さらに2週間ほどおいて油や澱などの不純物を取り除いた後、火入れ作業を経て、ようやく醬油は完成する。加熱すると菌の発酵が止まるだけでなく、醬油独特の香ばしさが生まれるのだという。

良質な大豆を使い、時間をかけてつくられた醬油は濃くまろやかで、うま味の深さが際立つ。
本格的な醬油を、ぜひ一度は味わってみてほしい。

ビンに詰めて販売される湯浅醤油

醬油の原料となる大豆

1年半以上、寝かせたもろみを布で包む

もろみを包んだ布を80枚重ね、少しずつ圧力を加えて絞ると、醬油ができあがる

80〜100年間使っている杉の樽。樽にも酵母菌、乳酸菌がすみついており、よい発酵が進む

醬油のもとになったとされる金山寺味噌。大豆と大麦、米を使った甘い味噌で、今も湯浅町でつくり続けられている

湯浅醬油の伝統の醬油づくりを受け継ぐ、湯浅醬油工場長の湯川福雄(右から2番目)さんら職人の方々