2023 NO.34
Menu召し上がれ、日本
甘酒スイーツ
体思いの、やさしい甘味
米や麦、大豆などに麴菌をつけ繁殖させた「麴」は、和食の根幹をなす発酵食品づくりに欠かせない。また、麴のもとになる麴菌は、学名をAspergillus oryzae=アスペルギルス・オリゼといい、日本では国の菌に認定されるほど重要な微生物だ。近年は、米と麴を合わせた米麴からつくる「甘酒」が、健康食品として熱い注目を集めている。甘酒は砂糖を全く添加していないのに驚くほど甘く、名前に反してアルコール分がないため、子どもから大人まで誰もが楽しめる。その上、「飲む点滴」といわれるほど栄養価が高い。
米麴に水を加え、60℃前後の温度を保ち6 ~ 8時間ほどおいてつくる甘酒。そのふくよかな甘さは、米のでんぷん質がブドウ糖やオリゴ糖に変化することで生じる。必須アミノ酸やビタミンB群などの栄養素も豊富だ。オリゴ糖は、腸内環境を整える善玉菌のエサになるほか、エルゴチオネインというアミノ酸には老化や生活習慣病を防ぐ高い抗酸化作用があるとされる。そのまま飲んでももちろんおいしいが、昨今は、ていねいに醸した新鮮な甘酒を楽しむ方法として、「甘酒スイーツ」が親しまれている。
観光地として有名な神奈川県鎌倉市にある麴専門店「sawvi」では、店内のカフェで甘酒を使ったさまざまなスイーツを提供する。店主の寺坂寛志さんは、「甘酒の甘さは、砂糖に比べて、とてもまろやか。また甘さだけでなく、アミノ酸のうま味や深みも感じられます」と語る。甘酒の味や香りにはクセがなく、クリーミーな乳製品や、酸味のあるフルーツと組み合わせやすいのも魅力という。
「sawvi」で人気の甘酒スイーツは、甘酒入りの生クリームと大豆の餡を包んだロールケーキや、甘酒入りのジェラートと季節の果物を重ねたパフェ。ジェラートをひとさじ食べると、米の香気がふわりと口中に広がり、自然な甘みが疲れた体にやさしく染みわたっていく。滋養効果があるときけば、甘いものを食べる時の後ろめたさもやわらぐ気がしてくるから不思議だ。
体にいいだけでなく、おいしくて、目にも楽しい、いいことずくめの甘酒スイーツ。食べず嫌いの人や初心者でも試しやすいデザートをきっかけとして、発酵食のファンがますます増えていくにちがいない。