自然を味方にしてつくる日本各地の郷土料理。
その加工過程では、味わい深い景色が見られる。
①山形
食用菊
日本では、菊は観賞するだけでなく、食材としても栽培されている。中でも山形県の「もってのほか」という紫色の品種は味も香りもよいとされる。茹でてお浸しにするとシャキシャキした歯ごたえが楽しめる(写真=photolibrary)
②福島
凍み豆腐
豆腐を凍らせて熟成・脱水したのち藁でくくり、寒風で干す保存食「凍み豆腐」。強い寒風が吹く福島県の冬は、凍み豆腐づくりに適している。水で戻し、煮物や和え物に使う(写真左=PIXTA、右=福島県観光物産交流協会)
③新潟
かんずり──とうがらしの雪さらし
新潟県名産の少量で料理の味を引き立てる辛味調味料「かんずり」は、とうがらしや米糀、ユズ、塩をあわせ3年以上発酵させたもの。他の材料と混ぜ合わせる前に塩漬けのとうがらしを数日雪にさらす工程により、とうがらしのアクが抜けて辛味がやわらぎ、コクが出る(写真=有限会社かんずり)
④山梨
干し柿
家の軒下にたくさんの柿が吊るされている、古きよき日本の田園風景は、晩秋の山梨県甲州市塩山で今も見られる。皮を剝いたあとに燻蒸したり、火を通したりすることで腐敗を防ぐ。20日ほどで甘く柔らかな干し柿に仕上がる(写真=PIXTA)
⑤兵庫
干しタコ
タコの名産地・兵庫県明石市の漁師に受け継がれる保存食。マダコの頭部と足に竹串を通し、ピンと張った状態に伸ばしてから、天日で一昼夜ほど干す。初夏にその年の大漁を祈り、干しタコを入れた「タコ飯」を食べる習慣もある(写真=神戸新聞社)
⑥高知
鰹の一本釣り漁
竿で鰹を釣る「一本釣り」は高知県中土佐町で400年以上続く伝統漁法。鰹が外れやすいよう工夫した専用の針を使っているため、鰹のかかったさおをあげると、反動で針が外れ、連続して釣れる。網漁のように身が傷つかず味もよい(写真=中土佐町)
⑦佐賀
有明海の海苔ひび
鮨をはじめ和食に欠かせない海苔(写真右)。九州西部の有明海では、大小の河川から流れこむ豊富な栄養分と、6mの干満差を活かした海苔の養殖が行われる。支柱に網を張った「ひび」と呼ばれる仕かけが並ぶ夕景色は、冬の有明海の風物詩(写真=PIXTA)
⑧宮崎
大根やぐら
加工用大根の生産が盛んな宮崎県では、冬、大根を干す「大根やぐら」が各地で見られる。竹製のやぐらは、高さ約6m、奥行きは50〜100mもある。10日ほどで辛味が抜け、甘味とうま味が増した大根は漬物などに加工する(写真=辻晃史)
⑨鹿児島
黒酢の壺畑
約200年前から伝統的な製法で黒酢をつくり続ける鹿児島県霧島市福山町では、ずらりと並んだ「壺畑」が壮観な景色を見せる。約54ℓ入る壺の一つひとつに玄米と水、麴を仕込み、1年以上かけてゆっくり熟成させる(写真=福山黒酢株式会社桷志田)