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2023 NO.34

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日本の食で健康になる!

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未来を醸す人
伝統をバネに、新しい発酵の未来を醸成する若者たち。

写真●逢坂 聡、福田依子
写真提供・発酵デパートメント、石崎嵩人、株式会社ヤクルト本社

発酵の魅力を発信する発酵デザイナー

発酵食品を食べる習慣をつけてから、病弱だった体質がみるみる改善したという小倉ヒラクさんは、発酵のパワーに魅せられ、いつしか全国の醸造家や生産者を訪ね歩くようになった。「日本各地に残るさまざまな発酵食品を現代の生活に合うようデザインし、若い世代にも広めていくのが僕の仕事です」。その活動内容は、商品のパッケージデザインから、絵本やアニメの制作、イベントの開催まで多岐にわたる。近年は、東京に「発酵デパートメント」をオープン。伝統的な発酵食品はもちろん、いつでもどこでも食べられる「アウトドア納豆」などのオリジナル商品が並ぶショップから、発酵の魅力を発信している。

そんな小倉さんが提唱するのは、ふつうの旅とはひと味ちがう「発酵ツーリズム」。生産地を訪ね、発酵食品を味わいながら、蔵が残る街並みやかつて物資を運んだ港などを見て回る。「発酵を糸口に土地の歴史や風土に触れる旅」だ。まずは地域の発酵文化を紹介する展覧会を都市で開催し、実際に当地を訪れて展示内容を追体験するツアーも行う。「普通の旅では訪れない地域で、驚くような景観や文化が残っている。まだあまり知られていない日本の姿を見つけてほしい」。

現場に赴き、醸造家と熱心に言葉を交わす小倉さん

左/東京都下北沢にある発酵デパートメント。常時500種類以上の発酵食品がそろう
中/外出先でも食べやすい「アウトドア納豆」はキャンプにもうってつけ
右/発酵デパートメントのオリジナル商品「にごり酢」

健康に役立つ菌を探す乳酸菌研究者

腸内環境を整えて健康を目指す「腸活」が、日本で流行している。バランスがとれた食生活や適度な運動とともに、腸にとってよい働きをする乳酸菌が入った飲料を飲むことも効果的な活動のひとつ。なかでも、独自の乳酸菌シロタ株でつくられる「ヤクルト」は、1935年に生まれた歴史ある乳酸菌飲料で、甘くて飲みやすく、今なおロングセラー商品として親しまれている。近年発売した「Yakult(ヤクルト)1000」は、シロタ株を多く含み、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能があるとされ、一時期は入手困難になるほど爆発的な人気を呼んだ。

柿山明香さんは、ヤクルト中央研究所で機能性食品の研究を行う研究員。研究所の長い歴史の中で培われてきた菌のライブラリーを参照しながら、健康に役立つ菌を探す毎日だ。
「一口に乳酸菌といっても、種類や摂取量によって発揮される効果は異なります」。柿山さんは、東北地方の漬物から採った乳酸菌で果汁を発酵させた飲料の開発に携わった。この飲料に含まれる乳酸菌には、花粉などによる鼻の不快感を軽減する機能が報告されているという。「菌の世界は解明されていないことばかり。まだまだ人の健康に役立つ乳酸菌を見つけられると思います」。

今後も健康の役に立つものをつくりたいという柿山さん

左/定番の「Newヤクルト」
中/シロタ株を1000億個含む「Yakult(ヤクルト)1000」
右/柿山さんが開発に携わった「ヤクルトのおいしいはっ酵果実」

「ヤクルト」に含まれる乳酸菌シロタ株