
2023 NO.34
Menu日本の食で健康になる!
進化する日本の菜食文化
酢飯にゆでた菊の花をのせ、手鞠に見立てた寿司
和食の基本となるだしも独特で、動物性由来のかつお節ではなく、昆布と野菜のだしを使う。昆布のだしをとる際に沸騰させるとえぐみが出るが、野菜はよく煮出すことでうまみが出るため、別々にだしをとり、のちに合わせる。食材の特徴を見きわめ、手間を惜しまないことで豊かな風味を生むのだ。野菜だしには、調理の際に出る皮や切れ端も使うという。
「仏教の教えでは、植物にも命が宿っていると考えます。植物の命をいただくからこそ心を込めて調理し、何ひとつ無駄にはしません」と野村さん。調理場での食品ロスはほぼゼロ。サステナビリティの観点から見ても、精進料理は時代にも適した料理なのだ。
華やかで、おいしく、身体にも環境にもやさしい。日本古来の菜食文化は、現代において最も豊かな食事と言えるのかもしれない。