おもてなしの心が生んだ岩手県のそば料理
そばは日本の麺料理で、ソバの実からとれるそば粉を使って作ります。他の麺類に比べて消化が良く、栄養が豊富でヘルシーな日本食です。「ざる」という容器に盛りつけ、冷たいつゆにつけて食べる「ざるそば」や、温かいつゆをかけた状態で出てくる「かけそば」など、さまざまな食べ方があります。
岩手県には「わんこそば」というユニークなそば料理があります。「わんこ」とはお椀のことで、小さなお椀に入ったひと口大の温かいそばを、好きなだけおかわりして、満腹になるまで味わいます。
イタリアのピッツケオリやフランスのガレットなど、世界中にそば粉を使った料理がありますが、日本のそばは、細長くカットされた麺料理です。
わんこそばは、大勢の人にゆでたてのそばを食べてもらう、「そば振る舞い」という風習から始まったといわれています。ほかにも、江戸時代 (1603〜1868)にお殿さまにそばを出したところ、何杯もおかわりされたのが始まりという説もあります。いずれにしても、「おいしいものを食べさせたい」という、おもてなしの心から生まれた岩手県ならではの郷土料理といえます。
ひと口分を何杯も食べる「わんこそば」
わんこそばの食べ方は、地域やお店によって違いがあります。盛岡市では、お店の給仕さんが「はいじゃんじゃん」「はい、どんどん」とリズミカルに声をかけながら、お客さんが満腹になって自分でお椀のふたを閉めるまで、ひと口分のそばを入れ続けます。花巻市では、お殿さまのもてなし料理が由来とされているため、掛け声はありません。
わんこそばは、10~15杯ほどでかけそば1杯分の量です。そばの他にも、ネギや大根おろし、海苔といった薬味やさまざまな副菜が添えられるため、味に変化をつけながらおいしく食べることができます。
わんこそばの薬味と副菜。刺身、天ぷら、鶏そぼろなどもあり、お店ごとにいろいろな副菜が用意されます。
記録を競う大食いイベントも開催
盛岡市と花巻市では、それぞれ年に1回、わんこそばの大会が開催されています。大会には日本各地から大食い自慢が集まり、制限時間の中でそばを何杯食べられるかを競います。花巻市で行われる「わんこそば全日本大会」では、2016年に、5分間で258杯という歴代最高記録が達成されました。熱気あふれる戦いに観客の声援が飛び交い、みんなで盛り上がる恒例行事となっています。
わんこそばは、家族や友達と一緒に楽しみながら食べられる料理です。わんこそばの専門店には国内外からたくさんの観光客が訪れます。みなさんも何杯食べられるか、挑戦してみませんか?