相撲の街・両国が発祥の「ちゃんこ鍋」
日本の首都である東京都には、近代的な高層ビルが立ち並ぶ新宿や、新しい若者文化を生み出す原宿、歴史ある下町の雰囲気が漂う浅草などがあり、それぞれの街に個性があふれています。
東京都の東部を流れる墨田川沿いには、伝統的な相撲の街・両国があります。相撲は日本で古くから親しまれており、大きな体をした力士たちが一対一で戦う競技です。両国には大相撲が行われる国技館や、たくさんの相撲部屋があります。ちゃんこ鍋は、力士の料理として両国で生まれました。
大相撲が行われる国技館の周辺にはたくさんの相撲部屋があり、街で力士と出会うこともあります。
強い体をつくる栄養たっぷりの力士の食事
相撲部屋の力士がつくる料理は「ちゃんこ」と呼ばれています。「ちゃんこ」の中でもちゃんこ鍋は、力士の食事として代表的な料理です。相撲部屋では、力士が住み込みで稽古をしていて、1日に2回、若手から親方までが「ちゃんこ」を囲みます。
栄養たっぷりの具材をだし汁で煮込み、塩やしょうゆ、みそなどで味付けをした鍋料理を、相撲部屋ではちゃんこ鍋といいます。味付けは部屋によってさまざまですが、肉や魚、旬の野菜を1回でたくさん食べることができます。安くて栄養価が高く、強い体をつくるために最適な食事だったため、明治時代(1868〜1912年)の終わり頃から力士の主食として広がっていきました。
だし汁は鶏や牛、豚などからとりますが、かつては鶏からとっただし汁だけが使われていました。相撲は土俵に手がつくと負けになるため、その姿勢を連想させる四つ足の動物は縁起が悪いと考えられていたからです。現在も本場所前には、縁起が良いとされる二本足の鶏でつくられることもあるようです。
「ちゃんこ鍋」の食べ方
ちゃんこ鍋は、具材がほどよく煮えたところで各自の器に取り分けて、さらに用意した具材を鍋に継ぎ足していき、調理しながら食べます。風味豊かなだし汁で煮込んだ具材には深い旨味が吸い込まれ、肉も野菜ももりもり食べることができます。具材を食べ終わったら、スープにお米やラーメン、うどんなどを入れて、鍋の締めとして楽しみます。
両国には、元力士がつくる本場のちゃんこ鍋を食べることができるお店が数多くあります。伝統的な鶏だしから個性豊かな合わせだしまで、相撲部屋秘伝のだしを使ったちゃんこ鍋を味わうことができます。
日本の家庭では食卓に土鍋とコンロを用意して、鍋料理を囲みます。締めにラーメンやうどんを入れるところも同じです。
また、体があたたまる鍋料理は、日本の冬の食卓にもよく登場します。ちゃんこ鍋ならどんなに食欲がないときでも、力士のようにたくさん食べて栄養をとることができます。だしや味付けを自分の好みに合わせて選べることも、ちゃんこ鍋の特徴です。