群馬県の名物駅弁「峠の釜めし」
群馬県は山々が連なる自然が豊かな地域で、草津温泉や伊香保温泉など温泉地が多いことで知られています。また、「だるま」づくりも有名で、全国の生産量の8割を占める約90万個が1年間に出荷されます。だるまは、願いを叶えてくれる縁起物として古くから親しまれてきました。
草津温泉名物の「湯もみ」。温泉を水でうすめず、熱い湯の温度を下げるために、湯をかきまぜる湯もみが昔から行われてきました。
「だるま」は倒しても起き上がることから、縁起物とされています。願い事をするときに左目を書き、願い事が叶ったら右目を書きます。
峠の釜めしは、全国的に知られる群馬県の「駅弁」です。「駅弁」は駅で売られているお弁当のことで、日本各地に名物弁当があります。景色を眺めながら列車で食べる「駅弁」は、鉄道で旅する人たちを楽しませてくれます。地元産の食材を使ったり、器の形を工夫したり、駅弁には各地の特色が生かされています。
峠の釜めしは、ぽってりとした陶器の土釜に、色とりどりの具材がぎっしり詰まっています。目でも楽しめて、味もおいしく、1958年の発売以来、60年以上にわたって多くの人に愛されてきました。
温かいお弁当を食べながら楽しむ鉄道の旅
峠の釜めしが誕生したのは、群馬県の横川駅という山あいの小さな駅です。地元の弁当屋さんが、「お客さんに喜んでもらえる新しい駅弁をつくろう」と考えたことがきっかけでした。弁当屋さんの社長が、お客さん一人ひとりにどんな弁当が食べたいか聞いて回ったところ、「温かくて、家庭的なぬくもりがあり、見た目も楽しいお弁当」という声が集まったそうです。
当時の駅弁は、冷めた状態で食べるのが当たり前で、使い捨ての四角い容器にご飯と数種類のおかずが入ったものが主流でした。弁当屋さんは、お客さんの声に応えるために試行錯誤を繰り返し、温かさを保てる陶器の容器を使うことに決めました。
昆布としょうゆで味をつけて炊いたご飯に、栗やたけのこなどの山里の幸をたっぷり入れた「峠の釜めし」は、今までにない温かさとおいしさが話題になり、群馬県の名物弁当になったのです。
容器の再利用も魅力の一つ
峠の釜めしの容器は、食べ終わった後もさまざまな料理に利用できます。直接火にかけられるため、ご飯を炊いたり、スープをつくったり、オーブンでグラタンやドリアを焼くこともできます。食器や植木鉢として利用するなど、アイデア次第で使い方が広がります。いろいろ楽しめる容器も、峠の釜めしの魅力となっています。
峠の釜めしの容器は、火にかけて料理をつくったり、食器にしたり、いろいろな使い方ができる楽しさがあります。
特産品の「だるま」にちなんだ「だるま弁当」も、峠の釜めしと並ぶ群馬県の名物弁当です。食べ終わった容器は、貯金箱にできます。
峠の釜めしは、現在は横川駅だけではなく、近隣の駅や高速道路のサービスエリア、直営店などでも売られています。また、東京都内の百貨店をはじめ、各地で開催される駅弁イベントにも出品されています。全国からさまざまな駅弁が集まる中でも、峠の釜めしは根強い人気があり、本場と変わらないおいしさを届けています。