山形県は日本一のさくらんぼの産地
さくらんぼ「佐藤錦」は、表面にツヤがあり明るい赤色をしています。その愛らしい姿は宝石にたとえられ、「初夏のルビー」と呼ばれています。果肉はほどよい弾力があり、やさしい甘さと爽やかな酸味が口いっぱいに広がります。
日本のさくらんぼ栽培は、明治元年(1868)にわずか数本の西洋実桜の木から始まりました。当時、日本各地で栽培が試みられましたが、6月に梅雨をむかえる日本では、雨に弱いさくらんぼをうまく育てることができませんでした。そんな中、例外的に収穫に成功したのが山形県でした。山々に囲まれて台風の被害が少なく、梅雨の時期も短い山形県の気候は、さくらんぼ栽培にとても合っていたのです。
春になるとパステルピンク色の花が咲く日本の桜は有名ですが、この桜は観賞用で、実がなることはありません。さくらんぼは、西洋実桜など食用の桜の木に実ります。
とびきり甘い!さくらんぼの王様「佐藤錦」の誕生
さくらんぼの中でも人気の高い「佐藤錦」は、昭和3(1928)年に誕生しました。当時のさくらんぼは酸っぱく、食べごろがすぐに過ぎてしまうため、ほとんどが缶詰用として出荷されていました。しかし当時の日本では、果物は加工せずそのままの味を楽しんでいました。そこで「おいしくて長持ちするさくらんぼ」の研究に乗り出したのが、農家の佐藤栄助さんです。
佐藤栄助さんは、15年間にわたって研究を続けました。そしてついに、歯ごたえがあって酸っぱい「ナポレオン」と、甘いけれど柔らかくて長持ちしない「黄玉」を掛け合わせて、新鮮な食感が長持ちする新しいさくらんぼを開発したのです。完成したさくらんぼは佐藤さんにちなんで「佐藤錦」と名付けられました。「佐藤錦」は甘さと酸味のバランスがちょうど良く、日本で一番人気のあるさくらんぼになり、「さくらんぼの王様」と呼ばれるようになりました。
おいしいさくらんぼを作る研究は、時代が変わってもずっと続けられています。現在、日本のさくらんぼは100種類ほどあり、「佐藤錦」と他の品種を掛け合わせたブランドも増えています。佐藤錦が新しいさくらんぼのお父さんになり、いろいろな魅力を持った子どもたちが生まれているのです。
探検気分で楽しむさくらんぼ狩り
山形県の果樹園では「さくらんぼ狩り」を楽しむことができます。枝に実っているさくらんぼはとても新鮮で、甘酸っぱい果汁をたっぷり含んでいます。「さくらんぼ狩り」は子どもたちに人気があり、初夏になると果樹園はたくさんの家族づれでにぎわいます。
雨に弱いさくらんぼがおいしく育つために、果樹園にはビニールの屋根がかけられていいます。
時期によって品種はさまざまですが、「佐藤錦」を思いっ切り食べるなら6月頃がおすすめです。真っ赤に実ったたくさんのさくらんぼの中から、一番おいしそうな実を見つけてほおばるのは、探検のようでワクワクします。