京都で育まれた「京菓子」
京都は日本の古都であり、最も人気のある観光地の一つです。伝統的な街並みや金閣寺をはじめとする数多くの寺社など、京都を訪れると、何世紀にもわたる日本の歴史と文化に触れることができます。
「五重塔」周辺には、古都京都ならではの伝統的な街並みが広がっています。
日本には四季があり、それぞれの季節を愛する心が独自の文化を育んできました。和菓子もその一つで、3月のひな祭りには雛あられ、9月のお月見にはお団子と、季節の行事にまつわる和菓子がたくさんあります。
和菓子の中でも、京都でつくられたものを京菓子といいます。京菓子は、寺社のお供え物として始まり、やがて宮廷の貴族が好んで食べるようになりました。16世紀後半から「茶の湯」が盛んになるとお茶に添えられ、徐々に庶民の食卓にも上るようになりました。
「京菓子」は宇治抹茶と相性抜群
「茶の湯」は、茶器から生け花にいたるまで、もてなしの心を込めて用意されています。中でもお茶に添えられる菓子は、お茶席に招かれた際の楽しみの一つです。特に京都の宇治抹茶は苦味が強いので、甘い京菓子がよく合います。
京菓子を特別なものにしているのは甘い味わいだけではありません。春には桜をイメージした淡いピンクと花びら、秋には赤く染まった紅葉など、京菓子の色や形には、季節によって移り変わる日本の美しい風景が映し出されます。名前にも工夫が込められています。古い詩歌にちなんだものや、言葉遊びのようなものなど、名前によって意味が深まり、想像がふくらみます。
京菓子には季節の変化が細やかに表現されています。「新年のお祝い」や「紅葉狩り」など、お茶席のテーマによって、茶事を主催する亭主はどのようにお客さまをもてなそうかと趣向をこらします。その過程で、京菓子はさらに洗練されていきました。
6月に提供される京菓子「紫陽花」。宝石のようにキラキラとした京菓子が、初夏を涼やかに彩ります。
職人技がつくり出す四季の味わい
京菓子の多くは、米粉の生地と餡でつくられています。色付けをした生地で餡を包んだ後、形を整えてきれいに仕上げます。また、京あめや羊かんなど、他にもさまざまな種類があります。京菓子は材料や道具がシンプルなので、おいしく美しい一品をつくれるかどうかは職人の腕にかかっています。
京都には、京菓子を味わえる店がたくさんあります。京菓子作りの見学や体験ができる店、茶道の作法で京菓子を食べられるカフェもあり、さまざまな楽しみ方ができます。その店やその季節でしか味わえない京菓子との出会いは、旅の思い出をさらに豊かにしてくれることでしょう。
カフェで味わえる季節の上生菓子。飲み物は抹茶や煎茶のほか、旬の果物のジュースやコーヒー、紅茶からも選べます。