愛知県の食文化から生まれた「手羽先」
愛知県には、「なごやめし」と呼ばれる食文化があります。濃厚でクセになる味付けが特徴で、県特産の「赤みそ」が大きく関係しています。大豆を長期間にわたって発酵させた赤みそは、味が濃くてうま味があり、栄養たっぷりの調味料です。先祖代々、赤みそに慣れ親しんだ愛知県の人たちは、「みそ煮込みうどん」「みそカツ」など独自のみそ料理を生み出してきました。
やがて、みそ料理の他にも、甘辛くて濃い味付けが好まれるようになり、愛知県ならではの「なごやめし」が育まれていきました。手羽先もそんな「なごやめし」から誕生した、愛知県を代表する名物料理の一つです。
愛知県は、「日本の三英傑」と呼ばれる織田信長(左)・豊臣秀吉(中)・徳川家康(右)の出身地としても知られています。愛知県では赤みそづくりが古くから行われ、三英傑も赤みそを好んで食べたと伝えられています。
甘辛い「手羽先」は「なごやめし」の人気者
今では「なごやめし」の人気料理として、全国にファンを持つ手羽先の唐揚げですが、かつては、手羽先はだしを取る材料にしか利用されていませんでした。手羽先の唐揚げが生まれたのは、昭和40(1965)年頃といわれています。
ある日、いつも料理に使っていた丸鶏を仕入れることができなかった料理人が、残っていた手羽先を揚げ、店で人気があった甘辛いタレをからめて提供しました。すると、これまでにない軽い口あたりが評判となり、人気が広がったのです。それまでわき役だった手羽先は主役となり、手羽先の唐揚げを出す店が増えて、愛知県の名物となりました。
多くの店ではしょうゆベースの甘辛いタレをからめていますが、タレの味は店によって違います。しょうゆの種類にこだわったり、ごまを振りかけたりと、どの店も独自の味を追求しています。また、コショウをたっぷり効かせたスパイシーな手羽先の店もあります。
しょうゆベースの甘辛いタレをからめた、定番タイプの手羽先の唐揚げです。
コショウ味の手羽先の唐揚げ。スパイシーで後を引くおいしさです。
皮がパリパリでうま味たっぷり
手羽先は骨があるため食べにくそうに見えますが、コツさえ覚えれば食べ方は簡単です。手羽先の両端を手で持って身の方を下へ引っ張ると、らくに身と骨を分けることができます。他にも、手羽先を口にくわえて骨を引き抜くなどいろいろな方法があり、特に決まりはないため、自分流の食べ方を試してみるのもいいですね。
手羽先は二度揚げしているので、外側はパリパリと香ばしく、内側はふわっとしていてジューシーです。特に揚げたてはパリッとした食感が最高で、食べはじめたら止まらないおいしさです。何本食べられるかチャレンジしたり、違う味を食べ比べたり、手羽先は誰でも気軽に楽しめる逸品です。