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2022 NO.33

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街歩きにっぽん街歩きにっぽん

8

俳句と温泉に浸る街
松山

日本最古の名湯がある街として古くから栄え、
俳人・正岡子規を育んだ文学の聖地。
言葉とお湯が沸き出る松山で、豊かな時間を過ごしたい。

写真●栗原 論、PIXTA、photolibrary

スタジオジブリのアニメ作品『千と千尋の神隠し』のモデルのひとつとなったとされる「道後温泉本館」(現在は保存修理工事を行いながら営業。外観は、『火の鳥』とコラボした「道後REBORNプロジェクト」のもので、現在は終了変更されている)
©TEZUKA PRODUCTIONS

愛媛県松山市は、日本列島の南西に位置する四国地方最大の都市だ。西は穏やかな瀬戸内海に面し、1年を通じて温暖な気候に恵まれる。江戸時代(1603~1868)に建造された松山城を中心に広がる市街地を、路面電車がゆっくりと走り抜けるようすは、穏やかなこの街の日常的な風景だ。

そして、松山のシンボルといえば、道後温泉である。日本最古の歴史書『日本書紀』や、11世紀に書かれた『源氏物語』にも記されている由緒のある温泉で、現在も、旅行者は道後温泉本館を中心に点在する共同浴場や足湯を巡って自由に楽しむことができる。

街を散策すれば、至る所でさまざまな句碑(俳句が彫られた碑)に出会うだろう。明治時代(1868~1912)に俳句の新たな地平を開いた俳人・正岡子規の生誕地である松山は、「俳句の都」でもあるからだ。俳句とは、日本で誕生した定型詩で、季語(季節を表す言葉)を織り交ぜながら5・7・5の合計17文字で表す文学のこと。四季の移ろいに思いを寄せ、時々の感情に耳を傾ける。自らの心をシンプルに表現する、世界で最も短い詩の形式は、近年は若い世代にも人気がある。

道後温泉本館内の「神の湯」。壁には白鷺が描かれた陶板画が貼られている(2022年現在、保存修理工事中。写真提供/松山市)

市内を走る路面電車「伊予鉄道」。蒸気機関車を模した車両も走る

道後温泉本館の屋根にある白鷺像。白鷺が温泉で傷を治したという伝説から、道後温泉のシンボルとなっている(写真提供/松山市)

松山を舞台にした夏目漱石による小説『坊っちゃん』からその名がとられた「坊っちゃんだんご」

標高132mの城山上に立つ「松山城」。城からは市内が一望できる

松山市駅前に立つ正岡子規の句碑。「春や昔 十五万石の 城下哉」。松山を象徴する一句