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2022 NO.33

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日本の文学を旅する

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最古の長編小説に親しむ

『源氏物語』の息づく場所へ

物語の舞台となった古の皇居
京都御所

京都府京都市は、『源氏物語』のストーリーの大部分が進行した地だ。

19世紀に東京へ遷都するまで天皇が居住した宮廷である京都御所は、光源氏誕生の地で、数々のドラマが展開された場所。現在の京都御所は再建されたものだが、それでも平安時代の様式に忠実に倣った建築は、宮廷文化の趣を今に残す。作品の雰囲気を肌で感じられる、唯一無二の場所だ。

多くの儀式が行われた紫宸殿

高御座(たかみくら)と呼ばれる、天皇の玉座(写真提供/宮内庁)

貴族に扮した行列が見もの
葵祭

5月初旬、平安時代の王朝装束に身を包んだ500人以上の行列が市内を練り歩く、京都を代表する祭。正式名称は賀茂祭。1400年以上前から行われていたとされ、『源氏物語』の「葵」の巻でも登場する。

祭の行列は「路頭の儀」と呼ばれる

物語世界を立体的に楽しむ
宇治市源氏物語ミュージアム

『源氏物語』終盤の物語(通称「宇治十帖」)の主な舞台である京都府宇治市に建つ、『源氏物語』をテーマにしたミュージアム。当時の貴族の暮らしや装束を解説した展示をはじめ、『源氏物語』の世界を体験しながら学べるユニークな博物館だ。

貴族の女性たちが囲碁を打つ、『源氏物語』のワンシーンを再現した展示

当時の貴族の乗りもの・牛車(復元)

紫式部ゆかりの寺院
石山寺

8世紀に創建された寺院で、滋賀県大津市にある。紫式部はこの寺に籠り、『源氏物語』の構想を練ったという。本堂には紫式部が物語を執筆したと伝わる「源氏の間」が残る。春と秋に毎年催される「石山寺と紫式部展」では、『源氏物語』関連の資料が公開される。

石山寺は観月の名所。紫式部が湖面に映る月を見て『源氏物語』の着想を得たという逸話も残る

境内にある紫式部の銅像(写真提供/石山寺)

本物の源氏絵に会える
徳川美術館

12世紀前半につくられた現存最古の「源氏物語絵巻」を所蔵する、愛知県名古屋市にある美術館。尾張徳川家に代々伝わった絵巻は毎年11月に公開されるほか、『源氏物語』をモチーフにした豪華な婚礼調度品の展示もある。

「源氏物語絵巻」竹河巻(表紙を参照)

江戸時代の大名・尾張徳川家伝来の美術品1万件を所蔵する(写真提供/徳川美術館)