niponica

2020 NO.29

Menu

日本の心を結ぶ

2


贈る心を「結ぶ」

水引細工

水引

水引とは、細く切った和紙を、らせん状にねじりながら紐状にし、糊をつけたもの。しなやかな上、簡単には切れない強度があるため、さまざまな形を結ぶことができる。
日本における水引の起源は諸説あるが、7世紀初頭、日本の朝廷へと献上された品に、紅白に染めた麻糸がかけられていたことがはじまりといわれる。やがて、糸に代わる紐として水引が使われるようになると、糸ではできなかった華麗な飾り結びが可能になり、独自の進化を遂げていった。
日本では、結婚の約束がかわされると、結納という儀式を行う習慣がある。双方の家族同士が顔を合わせ、新たな絆を結ぶためのものだ。このとき、結納品とよばれる贈り物を届けるのがならわしになっている。特別の想いが込められた品々を、美しく飾るのが水引細工である。
長寿を表す鶴や亀、冬にも青々としたままの松や竹、春に先駆けて咲く梅は、日本では縁起が良いモチーフであり、結納品には欠かせない水引細工として、祝いの席に彩りを添えている。

基本的な水引結び

左/お祝いの水引の基本の結び。一度結ぶとほどけにくい「あわじ結び」
中/「結び切り」は、お祝いの気持ちを気軽に贈りたいときの結び方
右/寄せては返す波のように、良いことが重なるようにと願いを込めた「より返し」。結婚以外のお祝いに使う

水引細工は、石川県を代表する伝統工芸の一つ。写真は、お祝いのお金を包む祝儀包み

祝いの席を華やかに彩る水引細工。
結納品の一例から、一つひとつの品々に込められた祝福の想いを紹介しよう。

友白髪

丈夫で切れない本麻糸を束ねたもの。夫婦そろって、白髪になるまで仲良く暮らせるようにとの祈りが込められている。

結納金包み

包みの中の箱にお金を入れるようになっている。金額は、あとから数字を修正できないよう、ひと筆で続けて書くという習慣が、今も残っている。

こんぶ

こんぶは、日本では、「よろこぶ」の語呂合わせとして、祝い事で使われることが多い。子孫繁栄の象徴とされている。

末広

末広とは、扇のこと。末永く幸せに、これからますます両家が繁栄するようにとの願いを込めて贈られる。水引の長さは約90cmだが、途中で切ることは絶対にしない。水引を「縁」そのものと考えているためだ。余ったときには、このように、先をくるっと巻き上げて長さを調整する。

指輪入れ

心のこもった贈り物にふさわしい、華やかな「あわじ結び」の水引細工。

創業から100年あまりの歴史を持つ津田水引折型は、伝統的な折形の基本に従いながら、創意工夫を重ねた美しい水引細工で、現代の暮らしにマッチしたお祝いの心を結び続けている。
写真は、5代 津田六佑氏。
「結納品は、両家が心を通わせる大切なもの。それぞれに意味があり、少しでも美しく仕上げることが、お祝いの一部になると考え、心を込めて結んでいます」と語る

作品はすべて、津田水引折型(石川県)のもの