2020 NO.29
Menu召し上がれ、日本
華やぐ心を結ぶ
茶巾寿司
茶巾寿司は、薄く焼いた卵で、具材を混ぜたご飯を包んだもの。茶巾とは、茶道で茶碗をぬぐうときに使う長方形の布のことである。茶巾に見立てた薄焼き卵を用いたことから、茶巾寿司と命名された。
今から100年ほど前、ある宮家に仕えていた料理人が、茶会において考案したものが好評を博し、それが茶巾寿司のはじまりであるといわれている。
茶巾寿司のご飯には、酢と塩、砂糖で調味した酢飯を使う。ご飯に混ぜる主な具材には、かんぴょう(ユウガオの実の部分を乾燥させたもの)、椎茸などを細かく切って煮たもの、胡麻などに加え、鯛の焼き身や蟹のほぐし身など、風味豊かな山海の幸が使われる。
ご飯を丸くまとめたら、春から夏の間は花豆という大きくて甘みのある豆、秋には甘く煮た栗を上に乗せ、薄焼き卵で包む。仕上げにご飯がこぼれないように、細く切った昆布を結ぶ。形を整えれば、茶巾寿司の出来上がりだ。
現在では、本来の茶巾寿司にさまざまなアレンジや演出が施され、家族や友人たちの会食の場で多彩なレシピが楽しまれている。ご飯に混ぜる具材も、食べ方も、お好み次第。食卓に笑顔をもたらすひと品だ。