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2023 NO.35

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召し上がれ、日本召し上がれ、日本

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そうめん
夏の食卓を彩る涼やかな麵

写真●新居明子
協力●池利(千寿亭)

冷たくて喉越しがよいそうめんは、夏に人気の麵料理。ダシと醬油、みりんでつくるつけ汁に浸しながら食べる

乾麵の束で売られるそうめん。野菜の色素で緑や黄色に色づけたものもある

そうめんは、小麦粉と水と塩でできた、糸のように細い麵。その直径は1.3mm未満であることが規格で定められている。乾麵の状態で売られているものを、食べる直前にゆでて流水でよくすすぎ、ダシをきかせた冷たいつけ汁に浸しながら食べる。見た目が涼やかで喉越しがよいだけでなく、食べごたえもあり、暑さで食欲が落ちる夏にはもってこいの麵料理である。

この細くて弾力のある麵は、無造作に引っぱってできるものではなく、まさに絹糸を紡ぐような、繊細で複雑な工程を経る必要がある。はじめに小麦粉と水、塩をこねてまとめた生地を、帯状にしてから表面に油を塗り、ひとつにねじりあわせながら延ばしていく。延ばしたあとは寝かせて熟成。これを繰り返し、やがて2本の棒に巻きつけてさらに細く引き延ばす。2mほどまでに延ばしたら吊るすように干し、乾燥させた後に長さ19cmに切断して出来上がり。

細くて見た目に涼やか、というそうめんの特徴を活かした「流しそうめん」は、野外イベントなどでよく行われる夏の風物詩。竹を半分に割ってつくった樋に水とそうめんを流し、流れてくるそうめんを競いあって食べるのが面白く、子どもたちに人気がある。

寒い季節には、あたたかくした「煮麵」もおいしい。あらかじめゆでたそうめんにダシつゆをはって煮立て、シイタケや青菜、卵などの具材をのせて食べる。

流れるそうめんを箸ですくって食べる「流しそうめん」(写真=PIXTA)

あたたかいダシ汁をはった「煮麵(にゅうめん)」は寒い季節の食べ方

そうめんの由来は諸説あるが、「三輪そうめん」という名物の産地として知られる奈良県桜井市の三輪地区には、約1200年前、三輪にある大神神社の宮司の次男が飢饉で苦しむ人びとに小麦を作らせ、その小麦粉からそうめんづくりが始まったという伝説がある。

今も大神神社では、毎年2月にその年のそうめんの卸値を占う神事に続いて、地元の女性らによる踊り「三輪素麵掛唄」が奉納される。歌にも振付にも、そうめんづくりの苦楽がしのばれるが、踊りはほのぼのと明るく、観客を幸せな気持ちにさせてくれる。歴史と寄り添いながらつながってきたそうめんと踊りは、これからも長く受け継がれていくだろう。

奈良県桜井市にある大神神社。そうめんの起源が伝わる(写真=大神神社)

毛糸をそうめんに見立て、麵を細く延ばすようすを踊る「三輪素麵掛唄」のひとこま。地元の女性らが大神神社の境内で奉納する