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温泉と史跡のある昔ながらの休息地
箱根

雄大な自然と各所に湧き上がる温泉で、旅人の疲れを癒してきた箱根。
東京から程近い日本有数の保養地で、くつろぎの時を過ごしたい。

写真●逢坂 聡、アフロ、PIXTA、shutterstock

晴れ渡った日には富士山を望むことができる「芦ノ湖」は、箱根随一の観光名所。湖にある4ヵ所の港を結ぶ「遊覧船」からは「箱根神社」の鳥居も拝める

江戸(現在の東京)と京都を結ぶ主要街道だった東海道で、箱根は旅人が逗留する宿場町として、古くから発展してきた。山々に囲まれた険しい峠道は東海道最大の難所とされたが、その地形は豊富な温泉の湧出源ともなり、地域を現代にまで続く日本有数の観光地に育てた。

毎年11月、武士の装束に身を包んだ人びとが練り歩く「箱根大名行列」。江戸と領地の往来のために、箱根の関所を通った武士の隊列を再現したもの

新宿駅発の特急列車に乗り、終点で降りたところが、箱根湯本駅。ここを拠点に鉄道やバスで移動することになるが、山の傾面をジグザグに上っていく「箱根登山鉄道」は、ぜひ体験してみたい乗りものだ。

最初に訪れたいのは、芦ノ湖周辺エリア。8世紀から尊崇を集める「箱根神社」や、17世紀当時の姿を忠実に再現した「箱根関所」など、由緒ある史跡が多い。天気がよければ、湖の遊覧船で彼方に佇む富士山を拝みながらクルージングするのもいい。また、日本の正月の風物詩である「箱根駅伝」の往路のゴールは、ここ芦ノ湖だ。

険しい山道も力強く走り進んでいく「箱根登山鉄道」。車窓からは季節の花々を楽しめる(写真提供=箱根登山鉄道)

1200年以上の歴史を誇る「箱根神社」

美術館が多いのも、箱根の魅力のひとつ。日本初の屋外美術館「彫刻の森美術館」では、自然の中に配された彫刻を散策しながら鑑賞したり、体験型作品で遊んだりできるので、子どもも楽しめる。

東洋美術が好きなら、2013年に誕生した「岡田美術館」がおすすめ。近世・近代(17~20世紀頃)の日本画や東アジアの陶磁器を中心にしたコレクションの展示数は約450点を数え、国指定の文化財も含まれる。特に縦12m、横30mの「風神雷神図」の大壁画の威容には圧倒される。

大自然をそのまま展示空間にした「彫刻の森美術館」(写真提供=彫刻の森美術館)

「岡田美術館」では建物正面の足湯に腰を落ち着けて、日本画家の福井江太郎による大壁画「風・刻(かぜ・とき)」を鑑賞するのがおすすめ。浮世絵をモチーフにしたチョコレートは、ミュージアムショップの人気商品(2021年10月時点の情報)