2025 NO.38
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召し上がれ、日本
宇宙日本食
地球上の味を宇宙で楽しむ

宇宙で生きていくために欠かせない宇宙食。有人宇宙飛行開始当初の1960年代、固形食やチューブ入りの流動食ばかりで味の評価は芳しくなかったという宇宙食は、半世紀以上の時をへて大きな変遷を遂げている。
その発展に貢献したのが、1998年から世界15か国が参画して運用されている国際宇宙ステーション(ISS)である。船内ではアメリカとロシアが提供する「標準食」をメインに、宇宙飛行士が自国の料理を持ち込める「ボーナス食」を合わせた食生活が組み立てられている。
日本人宇宙飛行士の場合は、国内の食品メーカーが開発し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が独自に認証した「宇宙日本食」からボーナス食を選択する。衛生管理を徹底した設備や、微小重力環境で破裂・飛散しない包装や調理法を定めた厳しい認証基準を満たすことに加え、おいしさが必須条件であるのはいうまでもない。
もともと食品の加工技術や衛生管理の質が高い日本では、各地の食品メーカーの参画により、2025年3月現在、認証された数は56品目までに増えた。なかには、福井県の高校生らが14年の年月をかけて開発したサバの缶詰もある。
1958年に世界で初めて即席麺を発明した老舗メーカーは、微小重力環境でも食べやすいよう、粘度の高いスープと、湯で戻したあとも形がくずれない塊状の麺に仕上げたラーメンを開発。また大手コンビニエンスストアの定番商品である鶏のから揚げは、フリーズドライ製法が施され、サクサクの食感はそのままに宇宙仕様へと生まれ変わった。
主食からおかず、菓子、飲料まで、メニューはどれも日本の食文化を反映し、カレーやおにぎり、焼きそば、煮込みハンバーグといった、ふだん家庭で食べられているような飾らない味が多いのが特徴的だ。
地上を離れた極限空間での暮らしに、ひとときのくつろぎを与えてくれる健康的でおいしい宇宙日本食は、海外のクルーにも人気が高い。

カップ焼きそば「日清焼きそばU.F.O.」はお湯を吸い切らせて仕上げる(©JAXA)