2025 NO.38
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街歩きにっぽん
見渡す限りの澄み切った海と空。
豊かな自然あふれる種子島で、
壮大な宇宙へ想いを馳せる。

「種子島宇宙センター」から打ち上げられるH3ロケット(©JAXA)
「種子島宇宙センター」内にある「宇宙科学技術館」では、宇宙開発の歴史や最新技術を楽しみながら学ぶことができる。宇宙ステーションでの無重力の空間にいるように見える撮影スポットも用意されている(©JAXA)
日本列島の南、鹿児島県の南方沖に浮かぶ種子島は、鹿児島空港から飛行機で約40分。高速船に乗れば、約1時間30分でたどり着く。温暖な気候と雄大な自然に恵まれたこの島には、日本の宇宙開発の最前線基地「種子島宇宙センター」がある。
轟音と閃光に包まれながら、群青の海を背景に空へと飛翔するロケットをひと目見ようと、打ち上げの日には全国から見学者が集う。世界一美しいと謳われるこのロケット発射場を備えた宇宙センターが日本の南につくられたのには理由がある。ロケットを東向きに打ち上げる場合、地球の自転の運動エネルギーがロケットのスピードに加算される。赤道に近く自転速度が速い場所ほどロケットに伝わる力が大きくなるため、北緯30度と比較的赤道に近く、広大な土地を有する種子島が、日本の宇宙の玄関口に選ばれたのだ。
歴史を振り返れば、種子島が一躍、日本史の表舞台に躍り出たできごとがあった。16世紀、この島に漂着したポルトガル人から鉄砲が伝来し、戦国時代の日本に大きな影響を与えたのである。それを記念し、当時の装束に身を包んだ人びとが試射などを行う「鉄砲まつり」は今なお毎年開催されている。鉄砲とともに伝わった「種子鋏」は、支点が持ち手と刃の中間に位置する中間支点式の鋏。切れ味が鋭く、利き手を選ばない利便性のよさから、やがて種子島を代表する伝統工芸品となった。17世紀には、大陸から伝わったサツマイモの栽培が始められた。近年は糖度が高く、ねっとりとした食感が特徴の品種「安納芋」に改良され、その濃厚な甘さを利用したスイーツが名物になっている。