
2022 NO.32
Menu木がつなぐ日本の文化
木がつくる極上のくつろぎ
2013年、日本初のクルーズトレインとしてデビューした「ななつ星 in 九州」。
匠の技を結集した豪華列車が九州の大地を駆け抜ける。
DXスイートの客室。大きな車窓から雄大な景色が楽しめる
ロイヤルワインレッドに塗られた車体に、金色のエンブレムが輝く。高級ホテルを思わせるぜいたくな佇まいが魅力のななつ星は、日本の南西部に位置する九州各地の名所を一流のサービスとともにめぐる観光寝台列車だ。
大きな展望用の窓がある広々とした客室やバーカウンターが併設されたラウンジカーは洗練された雰囲気の中にぬくもりが感じられる。それはきっと、車内が木の素材にあふれているためだろう。
一見、すべてが木造に思える内装だが、実は強度や耐火性を確保するための工夫が施されている。木の建材でできているようにしか見えない壁や天井には、薄さ0.2㎜の天然木の板をアルミに貼り合わせたものが使われているという。アーチ状の格子天井や装飾的な壁もみな職人が手で貼り合わせた突板によるもので、木の風合いを表現するために驚くほどの労力がかけられているのだ。
さらにななつ星の空間を華やかに彩るのが、九州の福岡県大川市に受け継がれる大川組子だ。組子とは、切れ込みや溝を入れた木片同士を組み合わせ、幾何学的な図柄を表現する木の工芸。数ミクロン単位で調整する職人技によって、繊細で頑丈な細工ができあがる。
車内の壁や窓を飾る組子は、柔らかい光を透かして美しい模様を映し出し、見る者の心を和ませる。
木がつくる極上のくつろぎに身をまかせ、壮大な自然と美しい景観を巡る。そんな旅を一生に一度は体験してみたい。
緑豊かな九州を走る「ななつ星 in 九州」