2019 NO.25

日本の漆工芸

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日本の手仕事
~漆器をうみだす職人たち~

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【漆塗り】
 漆を熟知しているからこそ、美しい艶が生まれる

上/漆を塗る「漆刷毛」には脂気の抜けた人毛が使われている。
下/輪島塗には小峰山から採れる珪藻土を焼いて砕いて粉状にした「地の粉」を用いる。

地図

漆器に施す漆塗りは、「塗師」と呼ばれる職人によって行われる。塗りの工程は産地によって異なり、輪島塗の場合は、塗りの工程だけで20工程ある。

輪島塗はとても堅牢なことで知られているが、その秘密はさまざまな補強技術にあるという。接合部分や欠けやすい部分を補強することで強度を上げるのだ。

最上質の漆をろ過し、数種類の刷毛で美しく仕上げられた漆器は、このまま商品になる場合もあれば、加飾が行われる場合もある。

1.壊れやすい部分に漆を塗る。
写真は、接合部分や欠けやすい部分を漆で補強する「木地固め」を行っている様子。

2.漆を染み込ませた布を貼り付ける。写真は、ふちなどの壊れやすい部分に布を貼り付け補強する「布着せ」を行っている様子。

3.市内の小峰山から採れる土からつくった「地の粉」を混ぜ合わせた下地漆を塗り込み、布の切れ目にある段差を平にしていく。

4.下地漆を乾かして、砥石で研ぐ。砥石は下地漆にあわせて粗さを変えていく。粗め、細かめ、より細かめの三段階に分けた粉を塗り込んでは研ぐ作業を3回くり返す。

5.塗りの作業に入る前に和紙で漆を包んで絞り漆を整える。

6.漆の状態をみながら塗り上げていく。

7.漆は水分を取り込みながら固まっていくので、湿度と温度を調整した室で乾燥させる。

8.乾燥と塗りを繰り返し、最後に、チリとホコリを遮断した専用の部屋で仕上げの塗りをほどこして、漆器が完成する。



塗師
津田 哲司 (わじま塗の津田)

輪島塗伝統工芸士。同じく、輪島塗の伝統工芸士である津田 眞一郎とともに親子で伝統の技を守り伝えている。