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2019 NO.25
日本の漆工芸
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強さと繊細さが生み出す美
日本において、食器や家具などの日用品をはじめとして、
祭具や武具、建造物、楽器にも多く用いられてきた漆。
その漆を用いた工芸品の数々は、どのような価値観や美意識から生まれ、育っていったのか。
人間国宝の室瀬先生にうかがいます。
談話:室瀬和美
日本における漆の文化
日本では、ウルシノキから採取された塗料として漆が用いられています。塗られるものは、日常品から祭具、道具や建造物に至るまで様々なものがあります。
日本人は漆の特性を活かした多くの品々を生み出しました。
様々な職人の手によってつくられた漆の文化は、表現も手法も多岐に渡り、私たちの目を楽しませてくれます。
読者の皆さまへ
「漆」…ウルシノキから採取された樹液を加工した天然樹脂塗料。接着剤としても利用される。ヨーロッパの黒塗りの家具や食器に用いられるラック虫の分泌物をアルコールで溶いて作られたラッカーとは異なり,塗り重ねることで透明感や深く濃い黒が出る。
「工芸」…工芸とは、機能性と美術的な美しさを融合する、日本の伝統的な手仕事を指す言葉。
「漆器」…漆を塗り重ねた工芸品。英語で一般にlacquerwareと呼ばれているが、ラッカーを使用したものではない。
漆を用いた工芸品の数々
筆記具などを入れておく箱である硯箱。表面に蒔絵や螺鈿などの技法を用い豆の葉と実が描かれて、蓋裏には兎が描かれている。
「豆兎蒔絵螺鈿硯箱」26×18.4×14.7cm
19世紀(所蔵=東京国立博物館 Image:TNM Image Archives)