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2019 NO.25
日本の漆工芸
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強さと繊細さが生み出す美
全てを美しく、日本を彩った漆器
中尊寺金色堂。奥州藤原氏の時代に花開いた平泉の黄金文化を今に伝える煌びやかな建造物。螺鈿細工などの当時の技術が集約された、日本の「国宝」第1号。(写真・所蔵=関山 中尊寺)
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徳川三代将軍家光の長女である千代姫の婚礼調度。蒔絵の技法などが用いられた華やかな丁度の数々は計27点が現存している。「初音の調度」17世紀頃(所蔵=徳川美術館 ©徳川美術館イメージアーカイブ/DNPartcom)
代表的な装飾技法
長い歴史と数多くの産地に育まれたことで、漆器は技法のバリエーションがとても豊富です。しっかりと下塗りと上塗りを行った後に施される加飾によって、漆器は豊かな表情をわたしたちに見せてくれます。
蒔絵
漆器の表面に蒔絵筆と呼ばれる細い筆で漆で文様を描き、漆が乾く前にその上に金・銀などの金属粉を蒔いて文様を作り出す装飾技法。金銀模様が美しく浮かび上がる、日本の漆工芸の代表的技法。
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・硯箱の優品。絵画的な絵柄が蒔絵で表現されている。「柴垣蔦蒔絵硯箱」17世紀頃(所蔵=東京国立博物館 Image:TNM Image Archives)
・葉の先端部分などは、金属粉を蒔いて、色づきはじめた葉の様子を表現している。
螺鈿
夜光貝などの貝殻の内側の真珠色に光る部分を薄い板状にすりおろして、模様に切って研磨し、漆器の表面にはめこんだり、貼りつけたりして装飾する技法。虹色に輝く絵柄が特徴で、蒔絵にも併用される。
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馬の背に乗せる道具・鞍。黒漆を塗った表面に花型に切られた貝が煌めく優美な意匠。日本の鞍の代表的作品「萩螺鈿鞍」17世紀頃(所蔵=東京国立博物館 Image:TNM Image Archives)
沈金
漆を塗った面を刃物で彫って文様を施し、その溝に漆を刷り込んだ後、文様以外の部分をふき取って金箔を粉にしたものを押し込む装飾技法。彫った点や線に沿って金粉等が残るので、細くて繊細な模様が描ける。
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沈金の技法で鳳凰などの文様が描かれた道具箱。日本における沈金の初期の作品。「鳳凰文沈金彫手筥」16世紀頃(写真・所蔵=白山比咩神社)