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2019 NO.25
日本の漆工芸
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伝統と革新 漆工芸の新しい形
従来の素地や商品、利用シーンを飛び越え、可能性を拡げつつある漆工芸の世界。
最新技術や他分野との融合から生まれた形を紹介する。
1漆×不燃材
コンクリートなどの不燃材の表面に漆を塗布する技術。独自開発の技術により、木や紙以外への塗布が可能になったことで、これまで無機質であった不燃材に自然のぬくもりとさまざまな表情を与えることに成功。漆の膜の力により、耐久性や防水性、抗菌性にも優れているため、飲食店の塗装にも向いている。漆の用途拡充だけでなく、建築の新たな扉を開く美術建材。
(協力:株式会社 平成建設)
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・漆塗りを全体的に施したコンクリートでつくられたアイランドキッチン。
・施工方法は、直接塗布するほかに不燃材パネルを用いる方法もある。
・塗布された表面は有機的な風合いを持つ。
2漆×石灰石
越前漆器(福井県)の職人の手によって一つ一つ手塗りして作られたスマートフォンケース。ケース本体に、石灰石を主原料とする「LIMEX(ライメックス)」という新素材を使用している。
LIMEXは水と木をほぼ使わずに紙の代替をつくり、石油由来原料を減らしながらプラスチックの代替をつくるため、環境負荷が少ない。現在は、食器への応用も進められている。
(協力:慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 伝統工芸みらいプロジェクト)
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ケースの表面には、越前漆器のある福井県鯖江市と近郊の越前エリアにゆかりのある食べ物のそばや特産品のめがねなどをイメージした絵柄が施されている。
3漆×3Dプリンター
3Dプリンターで成型した原型にシリコンを塗ってシリコン型を作成し、それに塗った漆を型から剥がすことにより作り出した漆器。漆の艶やかさと本来の美しさが堪能できる、これまでにない新たな漆工芸。漆器は最新技術によって形や厚さなどの制約から解き放たれ、極端に薄く自由な3次元曲面を実現できる。
(協力:角田陽太、写真:Yuu Kawakami /「SHIZUKU」)
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※3Dプリンター…デザインデータを元に樹脂などを層状に積層させ立体物を作り出す機械
4漆×アウトドア用品
漆器の下部に携帯用の革ひもを取り付け、腰やザックにぶら下げての運搬が可能なようにデザインされた漆マグ。超軽量でありながら、堅牢性に優れ、抗菌性や防水性も備えている漆器の特性を活かしつつ、従来の利用シーンを越えて、野外でも気軽に使用できるようになっている。
キャンプの際もかさばらずに持ち運べるように、スタッキング可能なつくりとなっており、そのひとつひとつを会津塗(福島県)の工芸士が手作りしている。
(協力:株式会社 関美工堂/「NODATE mug」)
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5漆×和紙
和紙に漆の細かな模様が印刷されたスリッパ、ブックカバー、鞄など。独自開発した強度のある和紙に特殊な加工を施すことで、これまで鹿革にのみ可能だった漆印刷技術を和紙にも応用できるようになり、美しく細かな柄が表現できるようになった。漆の柄は日本の古典柄からデザイナーによるモダンな柄まで多種多様である。その一枚一枚を熟練した職人が手刷りによって印刷を施している。
(協力:株式会社 大直/「SIWA ×URUSHI」)
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