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2024 NO.36

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日本で「書く」を究める

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書きに行きたくなる場所

気分が変わって、集中できる。
書くためだけに訪れたい、特別な空間。

出立の前のひと時を過ごす、
書店の長テーブル

慌ただしい空港の中にあって、静かで落ち着いた空間が広がる「羽田空港 蔦屋書店」。日本文化を紹介する書籍から小説や漫画まで、幅広いラインナップが揃う店内の本を、中央に置かれた長テーブルでゆっくりと読むことができる。この長テーブルは自由に使えるので、飛行機の出発までの時間、手帳を開いてスケジュールを整理したり、アイデアをまとめたりするために利用するビジネスパーソンが多い。併設するカフェの飲み物も持ち込みが可能。喧騒を離れてリラックスしながら手を動かせる贅沢な空間だ。

上/書棚に囲まれた長テーブル
下/外の様子を眺めながら、書き物に興じる
(写真=栗原 論)

手紙専用の机がある
雑貨店

ゆっくりと手紙を書きたければ、文具や絵本を扱う大阪の雑貨店「ポスト舎」を訪れたい。個性豊かな便箋や封筒がそれぞれ約30種類も揃い、購入すれば、つけペンの一種であるガラスペンとインクを借りることができる。窓際の一角にある使い込まれた木製の机に座って、公園の木々や街並みを眺めながらペンを走らせれば、おのずと気持ちが手紙に乗り移るだろう。

雑貨店の奥に置かれた机で、手紙をしたためる

包装紙などを加工したオリジナルの便箋

お店で購入できるガラスペン(写真=山口真一)

誰でも作家気分が
味わえる旅館

日本では、執筆に行き詰まった作家が旅館やホテルに部屋を借りて執筆に集中することを「カンヅメ」と呼ぶ。東京にある「鳳明館」は、そんなカンヅメが体験ができるユニークな旅館だ。過去には本物の作家が使ったという本館には、簡素で趣のある和室があり、木の文机に原稿用紙を広げれば気分は文豪まちがいなしだ。

作家になった気分で原稿用紙にペンを走らせる

1898年に建造された鳳明館本館(写真=栗原 論)