2019 NO.28

東京を食べつくす!

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銀座で地産地消

伝統ある老舗や国内外の高級ブランドショップが立ち並ぶ日本有数の繁華街・銀座。そのオフィスビルの中や屋上で、意外な生産活動によって生み出されている「銀座名物」とは。

写真提供● 銀座ミツバチプロジェクト
撮影● 栗原 論

都心に蜜を運ぶ銀座ミツバチプロジェクト

©NaokoYamamoto

2006年、「都市と自然環境の共生」をテーマにかかげ、銀座の企業人や商店主によって発足した銀座ミツバチプロジェクト。地上45mのビルの屋上に置いた巣箱から始まった取り組みは、地道に活動を続けて規模を広げ、現在は4ヵ所のビルの屋上に養蜂場を構え、年間約1tのハチミツを採取する一大生産拠点を築くに至った。

そもそも、「銀座で養蜂ができるのか?」と疑問に思う人は多いかもしれない。だが、実は銀座はミツバチの飼育に適した土地。ミツバチが銀座から飛んで行ける範囲には皇居や日比谷公園など蜜源となる植物が豊かな場所が多数存在する。また、農薬が散布されることもなく、冬もそれほど寒くないなど、銀座にはミツバチを育てるための好条件が揃っているのだ。

ハチミツを使ったケーキやカクテルといった、オリジナル商品をつくるお店も増え、ハチミツは銀座の新しい特産物として成長し続けている。

左上/ビルの屋上で採蜜を行うスタッフ
右上/花の蜜を集めた蜂たちが巣箱に戻ってくる ©NaokoYamamoto
左下/プロジェクト理事長の田中淳夫さん
右下/ハチミツは百貨店をはじめさまざまな店舗で販売される

目抜き通りのビルで育つ最新野菜工場

廊下に並ぶガラス窓の向こうでLEDライトに煌々と照らされたフリルレタスやルッコラが輝く。ここは、文房具や画材などの専門店の銀座伊東屋にある野菜工場。「文房具を売るだけではない、お客さんが楽しめる場に」と館内をリニューアルした2015年に設置された。

工場では、水と培養液で野菜を育てる水耕栽培が行われる。土を使わないため虫や病気などの被害を受けにくく、無農薬で育成できるのが特徴だ。また、水温や気温、肥料濃度、LEDで再現される日照時間は、それぞれIT技術によって最適な状態に自動調節される。野菜の品質も常に同じ状態に保たれるので、味のよい新鮮な野菜を安定供給できるのだ。

「みずみずしくておいしい」と評判で、会社帰りや買い物ついでに立ち寄るファンが増えている。

左/フリルレタスを栽培する工場責任者の森本克司さん
右/1階のドリンクバーで、野菜の購入も可能

収穫したての新鮮な野菜は12階のレストランで食べられる