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2017 No.21
街歩きにっぽん
本州のほぼ中央に位置し、周囲を山に囲まれた岐阜県の北部、飛騨地方。
里山の自然と古き良き日本を感じることができる美しい地域だ。
そこにもうひとつの街歩きの楽しさが加わった。

三町伝統的建造物群保存地区 国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている古い町並。人力車に揺られながら散策するのも一興だ(写真:アフロ)
2016年、飛騨市はアニメーション映画『君の名は。』によって、突然注目を浴びた。映画は、東京に住む男子高校生「瀧」と架空の町・糸守町に住む女子高生「三葉」の体が入れ替わるという奇想天外なできごとから始まる。だが入れ替わるうちに、いつしか互いを思い合うようになり、いよいよ会おうとするのだが、会えそうで会えないふたり。せつない展開に老若男女が涙した。
架空の町を舞台にしているものの、ところどころに飛騨市の風景が登場する。映画が公開されてしばらくすると、瀧と三葉の軌跡を辿るかのように、ファンたちが飛騨市を訪ね歩くようになった。東京を新幹線で出発し、名古屋からローカル線に乗り継いで瀧がまず降り立つ駅は、飛騨市の玄関口である飛騨古川駅、三葉の住む町を探し歩く途中にある神社は気多若宮神社、調べものをする図書館は飛騨市図書館がモデルとなっている。気多若宮神社は、2016年12月1日にユネスコ無形文化遺産の登録が決まった「古川祭」で有名だ。日本三大裸祭のひとつであるこの祭は、毎年4月19、20日に開催される。数百人のさらし姿の男たちが櫓を担ぎ、町中を巡行する「起し太鼓」は圧巻だ。
いつか東京に出るのを夢見て、「田舎」暮らしに飽き飽きする三葉だが、映画に描かれた飛騨の自然とのんびりとした人々の生活は、都会に住むものにとっては魅力的だ。どこか日本の原風景を思い起こさせるようで、それが多くの人を飛騨への旅に駆り立てているのかもしれない。