2017 No.21

ニッポンみやげニッポンみやげ

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小さな袋がつなぐ人の心
ぽち袋

写真:楠 聖子

新年を祝うお正月は日本人にとって、欠かせない重要な行事のひとつだ。子どもたちが待ちかねるそのクライマックスは、両親がおもむろに「お年玉袋」を取り出す瞬間だ。「お年玉」とは、古くは14世紀ごろからある新年の贈り物。現代ではお正月に子どもなどに贈られるお金のことを指す。表に「お年玉」と書かれた小さな封筒、「ぽち袋」は、もとは芸者などに渡すチップ、従業員への心付けを包む袋だった。

日本人はむき出しのお金を受け渡しすることに抵抗感があり、小銭を紙に包んでひねったものを"おひねり"としてチップやご祝儀を渡す習慣が古くからあった。小銭がこぼれないようにと、袋の体裁になったのが「ぽち袋」のはじまり。「ぽち」には「少し」の意味があり、「ほんの少しだけれど…」という控えめな気持ちから「ぽち袋」という名前がついたともいわれている。

相撲や歌舞伎などの興行で、客が多く入ったご祝儀として関係者に配られるものは「大入り袋」と呼ばれ、今でもその習慣は残る。最近はポップから粋なものまでデザインも多彩になり、お金の受け渡しだけでなく、メッセージを添える袋などとしても活用されている。