niponica is a web magazine that introduces modern Japan to people all over the world.
2017 No.21
ニッポンのPOP最前線!

Pop Culture Technology NEWS
先端技術で広がる次世代エンターテイメント
「持ち歩く」から「身に着ける」へ。
ポップカルチャーを楽しむための "ウェアラブル"なアイテムはダンス、音楽、ゲームの領域を広げて繋ぎ合わせ、最先端の新たな世界を創り始めている。

スマートフットウェアOrphe
ソールが光るスニーカーでパフォーマーが描く光
ソールが光る! 操作端末になる!!

Orpheを履いたパフォーマーが描く光の弧。音楽とともに色や動きが変化し、見る者に刺激を与え、新しい表現を生み出している
このシューズ、ただ光るスニーカーというわけではない。Orphe(オルフェ)はスマートフォンのアプリと連動できる"スマートフットウェア"だ。
両足に約100個のフルカラーLEDを内蔵。同じく内蔵した複数のモーションセンサーで動きのデータをリアルタイムに取得し、スマートフォンと接続することで、様々な光の色やパターンを設定したり、動きに合わせて外部スピーカーから音を出したりすることができる。
AKB48の公演ではメンバーがOrpheを着用して踊った。また、人気バンド、水曜日のカンパネラや世界的ダンサーのケント・モリ氏もライブやダンスイベントで着用。金沢21世紀美術館でのインスタレーションなどコラボレーションも広がっている。
Orpheの一般販売は2016年9月からスタート。「日常を表現にする」というOrphe開発者・菊川裕也さんの思いは、すでに現実のものとなっている。

株式会社no new folk studio 代表取締役
菊川裕也さん
Orpheは一見普通のスニーカーでありながら照明、楽器、コントローラといった様々な機能を持つ「履けるコンピュータ」です。この新しい道具を使い方も含めてオープンにすることで新しい表現が生まれ、その表現がファッションという文脈を絡めながら多くの人に広がっていくことを期待しています。

音と映像が創る新しい世界

「Rez Infinite」にて登場した新ステージ「Area X」。VRならではの美しい3D空間や浮遊感が体験できる
2016年12月、世界最大規模のゲームアワード"The Game Awards 2016"において、ゲームデザイナー水口哲也さんが制作した「Rez Infinite(レズ インフィニット)」が"Best VR Game"に輝いた。"Best VR Game"は2016年から設けられた新しい部門。VRとはバーチャルリアリティ※の略で、ヘッドマウントディスプレイを装着し、視覚に訴えることで仮想世界に入り込んだような体験ができるのがVRゲームだ。
「Rez Infinite」は、VRシステム「PlayStation®VR」対応の音楽シューティングゲーム。世界で最も親しまれている家庭用ゲーム機「PlayStation®4」と連携している。敵であるウィルスを駆除する際に発生する効果音が音楽となり、ビジュアルは音楽と呼応するように変化して物語が新しく生まれていく。音楽と映像の相乗効果で聴覚と視覚による新しい知覚現象が体感できる。
※バーチャルリアリティ(VR)は、1960年代後半に研究がはじまった次世代テクノロジーのひとつで、"もうひとつの現実"を作り出す技術の総称だ。コンピュータで3D空間を描き、立体音響により360度あらゆる方向からの音を再現。VRの世界を体験するのに欠かせないヘッドマウントディスプレイの進化によって普及が加速している

クリエイター・ゲームデザイナー
水口哲也さん
人間はイメージを伝えるために、様々な方法を使ってきました。会話、描画、身振り手振り。しかし、どれもがイメージの部分を伝えるだけでした。VRは視覚、聴覚、触覚といった複数のコミュニケーション方法を合わせて表現できる初めてのメディアと言えます。VR技術によってコミュニケーションは飛躍的に進化すると思います。

音楽を身にまとう新体験

世界を舞台に活躍する日本のロックバンドONE OK ROCK(ワンオクロック)の新曲試聴会でお目見えしたのは、合計20個ものスピーカーを実装した2種類のジャケット。「WEARABLE ONE OK ROCK」と名付けられたこれらのアイテムを着ると、スピーカーが連動し曲が全身に響きわたる。耳で聴くだけでは味わうことのできない、新しい音楽体験だ。世界でまだ1着ずつしか存在しないこれらのアイテムは、「現代の魔法使い」と称されるメディアアーティストの落合陽一さんが音響デザインを担当。周波数や音圧を細やかに調整して音質を向上させるとともに、スピーカーの軽さも追求し、着心地にもこだわっている。

Photo:神藤剛
筑波大学助教
落合陽一さん
昨今バーチャルリアリティとか、ハプティクス(触感技術)、つまり触覚として何かを感じるというのは、研究分野ではホットな領域です。音楽再生というエジソンが発明してかれこれ100年以上経った分野で、新しく視触覚、視覚的にファッションとして音を着るということと、それを体で感じる体験は非常に面白い進化だなと思っています。個人的には着られるくらい軽いスピーカーで良い音響を技術的に実現するのは、エンジニアとしては不朽の課題なので非常に燃えましたね。