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Super Figure Kanako / Shokichiイラスト (C)玉置勉強
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第7話
手がかりがないまま、一週間がすぎた。
難しいとは分かっていたが、なんの成果もないと、精神的に追い詰められる。
可奈子は焦れていた。リュックに詰められ中野を徘徊する以外の可奈子は、部屋の隅でしかめっ面をしていることが多くなった。気持ちは分かるが、ちょっと過剰なくらいだ。自然、知也も腫れ物をあつかうように可奈子に接した。
背中にストレスの塊を背負っていると、相対的に事情を知らない他人と話すのが楽しくなってくる。
今日も中野ブロードウェイをうろついていると、知也の携帯が震えた。恵那からだった。
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「ごめん、ちょっとだけ、いい?」
「いいんじゃない」
首をすくめ、知也は待ち合わせ場所に向かった。あれ以来、たびたび恵那と会うようになった。恵那も中野ブロードウェイを根城にしているのか、偶然会うこともあれば、携帯で呼び出されることもあった。可奈子も息抜きとして認めてくれたのか、最近はあまりぐずらない。
そして今日も、収穫はなかった。
中野ブロードウェイから知也の家までは、徒歩で十分ほどの道のりだ。
最近は慣れたもので、可奈子も人通りが少ないところを狙ってはリュックの口から頭を出した。切れるほど冷たい風に長髪を洗わせつつ、後方に流れていく景色を眺めている。
「最近、よく恵那と会うよね」
「ごめん。なかなか見つけられなくて」
可奈子の声に非難する響きはなかったが、知也は勝手に右腕が見つからないことを責められていると解釈し、うつむいた。そんな知也を励ますように、変に明るい調子で可奈子は言った。
「好きなの? 恵那」
「……嫌いじゃない」
「かっこわる」
可奈子に言われるまでもなかった。自分は恵那の話にだらしない笑みと相づちを返すぐらいで、行動を起こすわけでもない。あせらなくてもいいと思う反面、自分はこうやって先延ばしを続け、結局はなにもできないまま終わるんだろうなと、ぼんやり思った。
対向車のライトが見えた。可奈子はリュックに潜りこむ。対向車が過ぎ去っても、可奈子は顔を出さなかった。
「私、負担になってる?」
リュックの中から声がした。知也はあわてて首を振り、すぐ可奈子には見えないと気づき、裏返りぎみの声で「そんなことない」と言った。
可奈子の返事はなく、そのまま家に帰って、寝た。

Copyright (C) Shokichi/Web Japan, English translation (C) John Brennan 2008.
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