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Super Figure Kanako / Shokichiイラスト (C)玉置勉強
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第3話
そんな目にあった翌日に、自室で圧死の危険が待ち受けているなんて、思ってもみなかった。
自室の棚の下から這い出すと、知也は完全左右対称の顔に行き会った。
「私は悪霊でも妖怪でもネッシーでもない。あんたに危害を加える気もない。いろいろ不満はあるけど、作り主が死んだらそれなりに困る。あと私の名前は可奈子。OK?」
可奈子と名乗った人形は早口でまくしたてた。知也は半分も分からなかったが、可奈子の迫力に気圧され、首を縦に振った。
「分かればよろしい」
可奈子は我が意を得たりとばかりに、胸をそらせて得意げな顔をした。セーラー服からのぞく肌は真っ白で、継ぎ目は見当たらない。
だが、間違いなく、彼女は知也が組み立てたフィギュアなのだ。
中野ブロードウェイで吐き出された真っ黒いカプセルには、どれにも2/3スケールフィギュアのパーツが詰まっていた。既存の漫画やアニメのキャラクターには見えなかったが、一晩かけて知也自身が組み立て、クローゼットにしまっておいた。
そのときまでは、間違いなくただのフィギュアだった。「動いて喋って作り主を殴ります」なんて注意書きはなかった。
そんな知也の戸惑いを踏み蹴散らすように、可奈子はアクション過剰なくらい、くるくる動く。
どうしよう。
フィギュア製作を趣味にして長いが、作ったフィギュアが動き出したときの対策など、考えていなかった。警察。国民消費生活センター。FBI。MIB。いくつかの単語が脳裏に浮かんだが、どれも現実的とは思えず、棚とフィギュアの残骸をためつすがめつする可奈子の姿を視線で追うしかなかった。
やがて知也の視線は一点に止まった。
「それ、痛くないの」
「それって?」
可奈子の右腕は、肘から先がなかった。

Copyright (C) Shokichi/Web Japan, English translation (C) John Brennan 2008.
Edited by Japan Echo Inc.