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Super Figure Kanako / Shokichiイラスト (C)玉置勉強
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第2話
階段の踊り場に、ぽつんとカプセル自販機が置かれている。
止まった足は、誘われるように踊り場へ向かう。
「変なの」
自販機の形に奇妙なところはない。
知也の腰ぐらいの高さの長方形の箱に、ハンドルと硬貨の挿入口とカプセルの受取り口がある。一回、百円から三百円。硬貨を投入してハンドルをひねると、球形のカプセルが受取り口に落ちてくる。カプセルには人形や玩具が入っている。人形や玩具は子供向けから知也みたいなオタク向けまで、数千におよぶ種類がある。
変なのは、この自販機の置かれている場所と外装だ。
中野ブロードウェイにはいくつかのカプセルフィギュア専門店があるが、こんな階段の踊り場にカプセル自販機をひとつだけ設置するような店はない。
「なんのフィギュアだろ」
しゃがみこみ、知也は箱の周囲を眺め回した。筐体にはなんの表示もない。普通はカプセル内の玩具を示すステッカーが貼られているはずなのだ。内部のカプセルも黒く塗装されており、なんのフィギュアだかまったく分からない。
それでも、知也はいつの間にか財布を取り出していた。
筐体を前にすると反射的に財布を出してしまう自分が少し笑える。通学用の定期があるから、電車賃の心配はない。知也は自嘲ぎみの微笑を浮かべ、コインをセットした。
ハンドルをつかむ。
季節は冬なのに、なぜか暖かい。
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ハンドルをひねると、いきなりもげた。
「へ?」
知也は目を丸くして、手の中にあるハンドルだったものを見つめた。力をこめたわけでもないのに、簡単にすっぽ抜けてしまった。
同時に、筐体が震え始めた。
カプセルが筐体内部のレールを数珠つなぎに滑っていくのを、知也は唖然と見つめるしかない。
収められていたカプセルが一挙に吐き出されてきた。
とんでもない勢いだった。
数秒でカプセルは受取り口からあふれ、地面にこぼれた。知也は後ずさろうとして足をとられ、派手にしりもちをつく。その体にもカプセルが降りそそいだ。
「助け――」
助けを呼ぼうと開けた口にカプセルが見事にはまる。
カプセルが吐き尽くされるのと、知也がカプセルで溺れ死ぬと思ったのは同時だった。
 間違いなく、運勢は「最悪」だった。

Copyright (C) Shokichi/Web Japan, English translation (C) John Brennan 2008.
Edited by Japan Echo Inc.