第2話
三回連続で、同じフィギュアが出た。
どんな占いより分かりやすい。今日の運勢は「最悪」ということだ。
知也はカプセル自販機を前に、ため息をつき、肩を落とした。
フィギュアショップに流れるアニメソングは「逆境にくじけるな。あきらめなければ希望はある」と知也をはげます。ダブったカプセルばかり詰まったリュックに、希望の余地はなかった。
「希望は、また今度で」
つぶやき、知也はフィギュアショップを出た。
天井の低い通路は、いつも奇妙なさざめきで満たされている。
![Illustration](images/l_talb080125.jpg)
知也には、それが中野ブロードウェイの息づかいのように聞こえる。
四階建て、築約四十年、内部は決して広くない。一見するとさえないショッピングビルだが、この中野ブロードウェイは特異な建物だ。フロアにはパズルのように小さな店舗が詰めこまれ、その多くがオタク向けの店だ。アニメショップ、同人ショップ、メイド喫茶、レンタルショーケースなど、雑多な店が軒を連ね、一部からは「オタクビル」とも呼ばれる。
エスカレーターに乗り、知也は一階に降りた。
二階から四階まではマニア向けの店が密集するが、一階には薬局やファストフードや洋品店などの、一般向けの店舗が入っている。平日の夕方は買い物をする主婦や学校帰りの高校生でそれなりに賑わう。
知也は背中を丸め、早足で早稲田側の出口へ向かった。
「重い」
カプセルが詰まったリュックが歩くたび肩に食いこんだ。散財の結果でしかないリュックなど、許可さえあればすぐに投げ出してしまいたかった。
出口まで十メートルのところで、思わず足が止まった。
Copyright (C) Shokichi/Web Japan, English translation (C) John Brennan
2008.
Edited by Japan Echo Inc.
Edited by Japan Echo Inc.