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Super Figure Kanako / Shokichiイラスト (C)玉置勉強
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第1話
殴られた痛みで、ようやく目が覚めた。
いや、そんなはずはない。
きっと悪い夢、それも極悪の夢がまだ続いているのだ。
けれど頬の痛みは紛れもない現実感を脳に伝えてくる。
夢でもなんでもいい。この際、早く逃げなければ。
知也はしりもちをついたまま、両手両足を使って動いた。
不審人物はクローゼットから出てきて、知也に歩み寄ってくる。
ぶつぶつとつぶやきながら。
いわく、朝方に目が覚めたが、扉を押しても開かなかった。扉をいくら叩いても、部屋の主はいっこうに気づいてくれない。
「あんたさ、女の子を暗くて狭いところに閉じこめる趣味とかあるわけ?」
不審人物は知也をなじりながら、部屋の奥に追いつめていく。身長は百センチそこそこだが、小さな体にはちきれそうなほどの怒りがこもっていた。捕まったらなにをされるか分からない。
「な、南無阿弥陀仏アーメンハレルヤ!」
背中が棚にぶつかる。追い詰められた。
アニメや漫画なら、いまの知也は、さしずめ物語のオープニングであっと言う間に殺される一般人Aだ。
「後ろ! 危ない!」
このとき、不審人物が叫んだ。
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「え?」
振り向くと、棚がすでにバランスを崩していた。
棚に並んだフィギュアたちが、ばらばらと降ってくる。知也は逃げることもできず、自分に倒れこんでくるフィギュアたちを呆然と見た。
これも走馬灯の一種なのか、昨日のできごとが一瞬のうちによみがえる。
知也はこの不審人物、いや「不審人形」を知っていた。
腰まである栗色の長髪。まともな学校なら絶対に採用しないパステルピンクのセーラー服。そして、肘のあたりから先が欠けた右腕。
全部、見覚えがある。
少女は、知也が昨日組み立てたフィギュアだった。

Copyright (C) Shokichi/Web Japan, English translation (C) John Brennan 2008.
Edited by Japan Echo Inc.