第7話
「ポリストーンもいいんだけど、割れが出ちゃうと困るじゃないですか。知也さんどっちがいいと思います? 私は――」
今日も恵那の口はよく回った。話題はいつもフィギュアの話だった。というより、他の話題は出ない。そういう意味では、恵那は非常にオタクらしかった。
恵那の話に決まりきった相づちを打っていると、足を蹴られた。
久しぶりの痛みに顔をしかめる。また可奈子が怒っているのかと思ったが、すぐに蹴りはやんだ。しばらく平穏が続いたが、今度はリュックがパンツの裾をひっぱり始めた。中から「あーもう」という感じのため息まで聞こえてくる。
「知也さん?」
怪訝な顔をしている恵那を笑顔で誤魔化し、テーブル下のリュックをずらして足から遠ざけた。焦る気持ちは分かるが、正直なところ、少し鬱陶しくもなっていた。
![Illustration](images/l_talb080219.jpg)
「ごめんごめん、なんでもな――」
「好きです付き合ってくださいずっと前から好きでした!」
喫茶店に響き渡るほどの声で、唐突にリュックが叫んだ。
声は一瞬で知也の思考を真っ白に染めた。わけが分からないまま、とりあえずコーヒーを飲もうとして失敗し、盛大にむせた。
だが、恵那はなぜか頬を染めていて、こっくりうなずき、
「はい」
知也はシャツをコーヒーで染めたまま、
「はあ」
と間の抜けた返事をした。
Copyright (C) Shokichi/Web Japan, English translation (C) John Brennan
2008.
Edited by Japan Echo Inc.
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