2017 No.20

日本列島 鉄道の旅

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鉄道の旅をより快適により安全に

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円滑な運行に欠かせない指令員の判断 新幹線総合指令所

「コンピューターのシステムを利用している運行管理の現場にも、人の判断力が欠かせません」東海道新幹線の輸送指令長を務める平山勉さんは、現場での判断の大切さを語る。

指令員の経験がものをいうのが、台風などでダイヤが乱れた時だ。例えばホームの混雑の状況は、季節、曜日、時間などで常に変化する。どの列車から動かせば、混乱が少なく済むかは、いまだにコンピューターだけでは決められない。輸送指令員が、モニター画面だけでなく実際にホームの状況等を確認して的確なダイヤ変更などの判断を下しているのだ。

1日最大432本(2016年10月までの実績)もの列車が運行される東海道新幹線。何か起きれば、各分野の指令が集まって意思決定を行う

海外でも活躍する日本の多彩な鉄道技術

鉄道大国、日本の先進技術は、海外にも積極的に提供されている。2007年に開業した台湾高速鉄道は、日本の東海道・山陽新幹線で運行されている700系車両を基にした車両「700T」が使用されている。人材育成も、安全・定時運行で実績のある日本の鉄道会社が協力している。日本ならではの緻密な訓練・研修によって教官となるコア人材を養成した。開業から10年近くが経過した現在も重大事故は皆無だ。

英国のロンドンと英仏海峡トンネルを結ぶ高速新線「High Speed 1」には、2009年から日立製作所が開発した高速車両「クラス395」が運行されている。新幹線の技術が生かされた車両で、最高時速は225km。日本の新幹線並みの高い信頼性を発揮し、ダイヤも正確だ。床下にディーゼルエンジン付き発電機を装備したハイブリッド高速車両、「AT-300」の運行開始も目前だ。


ロンドンと英仏海峡トンネルを結ぶ高速新線を走る日本製車両。在来線と高速専用線の両方を自在に走れる

台湾で活躍している高速鉄道は、静粛性、乗り心地の良さ、定時運行などの面で日本の技術が評価されている

インドネシアやミャンマーといった新興国にも、日本の鉄道技術が導入されている。新型車両の導入で役目を終えた車両を、メンテナンス技術とセットで輸出。単に中古車両を譲渡するのではなく、良い物を長く大切に使い続けるノウハウを多くの国に伝えている。

インドネシアのジャカルタに輸出された日本の鉄道車両。日本ではJR常磐線、東京メトロ千代田線を走っていた


風情を楽しむ旅列車

地域の郷土色を生かした観光列車が、日本各地に続々と登場している。四季折々の自然を堪能できるパノラマ列車や、地元の天然素材を使ったくつろぎのスペースなど、ただ移動するだけではなく、列車に「乗ること」自体を楽しむことができる。

写真:叡山電車、えちごトキめき鉄道、九州旅客鉄道、マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ

●クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」

列車内にしつらえられた豪華客室に滞在しながら、九州内を周遊するクルーズトレイン。車内には、地域の伝統工芸家が一つひとつていねいにつくりあげた磁器や木の組子欄間などが用いられ、クラッシックな中に華やかな雰囲気をつくっている。(写真提供 : 九州旅客鉄道)


●「ゆふいんの森」

九州の人気温泉地・由布院に向かうリゾート特急。窓を大きくとった客室から沿線の車窓を楽しみ、木質のモダンなデザインでまとめられたフリースペースで語らいながら、旅の雰囲気を盛り上げることができる。


●叡山電車「きらら」

天井まで広がる窓に向けた座席に座って、ゆったりと京都洛北の自然を観賞できる。秋の紅葉シーズン、車内が紅に染まる車窓風景は圧巻だ。


●「えちごトキめきリゾート雪月花」

新潟県のローカル鉄道には、沿線の風景と地元の味覚を同時に味わってもらえる観光列車が運行されている。日本海の絶景や妙高の山並みを眺めながら、新潟県の海の幸、山の幸が堪能できる。


●「とれいゆ つばさ」

山形新幹線に登場したリゾート列車。セールスポイントは、電車の中で温泉を楽しめる「足湯」車両だ。座席を和風の畳敷きにした車両や、地元の食べ物や日本酒を販売するラウンジカーなど、列車に乗りながら、温泉街を散策する楽しみを体験できる。