2017 No.20

日本列島 鉄道の旅

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鉄道の旅をより快適により安全に

人と技術の総合力がきわだつ日本の鉄道
日本の鉄道の凄さは、新幹線のスピードだけではない。大量輸送を保ちながらダイヤの正確さ、安全性・快適性、そして省エネルギーを実現している点だ。テクノロジーと人の力が融合した、日本の鉄道技術の総合力に迫る。

写真:アフロ、九州旅客鉄道、 東海旅客鉄道、 中井精也、 日立製作所、 マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ

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次世代のエコロジー車両 《DENCHA》

2016年秋から九州で運転されている「DENCHA」

車内の情報表示画面では車両内の電力の流れを解説するエネルギーフローも表示

電池で走る次世代の鉄道車両が登場した。JR九州が開発した蓄電池電車「DENCHA」だ。「DENCHA」は、DUAL ENERGY CHARGE TRAINの略で、電気が通っている区間では架線の電気で走りながら電池に充電し、電気が通っていない区間では充電した電気で走る。ブレーキをかける時に発生する電気も充電できるので、現在電気が通っていない路線で走っているディーゼルカーに比べエネルギー消費や二酸化炭素の排出量を4〜5割程度削減でき、排気ガスもなくなる。

819 DENCHA

コツコツと進化を続ける東海道新幹線

「新幹線の進化に終わりはありません」そう語るのは、車両開発の責任者である上野雅之さんだ。JR東海では、新幹線をより心地よく、正確に、そして安全に走らせるために、全列車の詳細な走行データを収集し、分析と研究を続けている。2020年度に登場予定の新型車両「N700S」は、そうした地道な研究から生まれた技術者たちのアイディアの結晶だ。積み重ねた進化のいくつかを見てみよう。

【その1】揺れが減り、乗り心地がアップ

新幹線の顔である先頭車両の形は、新幹線の乗り心地を左右する重要な要素の一つだ。2007年に登場したN700系から、航空機設計などにも活用されている手法を用いて開発。最新型の「N700S」では3D解析や空気抵抗を分析する実験などを重ねて、「デュアルスプリームウィング形」という翼を広げたようなデザインが生まれた。これにより高速走行時に生じる風の抵抗や空気の渦による揺れ、トンネルを通過する際に発生する音を小さくする効果がある。

先頭形状の進化

少しでも騒音を小さく、そして揺れの少ない快適な車両を目指して進化したN700Sの新しい顔 ※ライトの位置は未定です


【その2】小型化・軽量化で進む省エネ

新型車両では、走行に関わる装置を約20%軽量化し、さらなる省エネルギー化を実現した。電機メーカーと共同開発した今までよりロスが少なく高い温度でも動作可能な次世代半導体を採用し、走行風による冷却方法と合わせることで小型・軽量化できた。


【その3】ブレーキ距離を短縮し、安全性が向上

列車を自動的に制限速度以下に抑えるシステムとブレーキの仕組みを見直して、地震発生時に自動でかかるブレーキの停止距離をN700Aよりさらに5%短縮。たった5%に思えるが、地震発生時により早く列車を止めるなど、より安全な新幹線を作り上げることにつながる。

コツコツと地道な研究を得意とする日本人の気質が、高速鉄道の技術向上にも生かされている

こうした進化の積み重ねこそが、新幹線が何年たっても変わらず世界の最先端であり続ける理由なのである。