2017 No.20

日本列島 鉄道の旅

2

列車旅の演出者たち

写真:えちぜん鉄道、栗原景、高木比呂志、東日本旅客鉄道、マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ、由利高原鉄道、両備ホールディングス

「もう一度あの列車に乗りたい」「また来よう」。旅人にそう思わせる魅力は、車両だけではない。列車旅の楽しさを何倍にも広げ、「おもてなし」の心で旅人を迎える、演出者たちの存在が欠かせない。

(右上)DESIGNED BY EIJI MITOOKA + DON DESIGN ASSOCIATES

まごころ列車 おばこアテンダント

絣の着物姿のアテンダントが乗客をサポート

(秋田県・由利高原鉄道)

旅行者や地元の人々を温かくもてなしてくれる地方の鉄道。秋田県の由利高原鉄道では、1日1往復の「まごころ列車」に「絣」の着物を着た「おばこ」と呼ばれる女性アテンダントが乗務している。乗客の乗り降りを手伝ってくれるだけでなく、沿線の観光情報を語ってくれたり、アテンダント手作りのおみやげを旅の思い出にプレゼントしてくれたりと、旅の思い出づくりを手伝ってくれる。地方ならではの、心のこもった旅を楽しめる。


おばこ姿の人々がお出迎え。「おばこ」とは、元々は秋田の言葉で「若い女性」という意味。秋田の方言が混じった案内は、東京の言葉とは印象が異なり、懐かしい雰囲気がある

終着の矢島駅から上り列車が発車する時は、売店の人気者となっている女性や社員が盛大に見送ってくれる

たまII世駅長

猫が一番偉い!?"スーパー駅長"

(和歌山県・和歌山電鐵貴志川線貴志駅)

廃止届けの出された路線を引き継ぎ、地元の人々と一緒になって再生した和歌山県の和歌山電鐵。飼い主から「たま」のすみかを駅に置いてほしいと頼まれ、三毛猫の「たま」が「猫駅長」に就任し、大きな話題となった。現在は、「ニタマ」が「たまII世駅長」に就任。貴志駅で乗客を迎えている。日本では、猫は「福を招く動物」。たまのイラストを描いた「たま電車」も走り、内外から多くの観光客が訪れる地域のシンボルとなっている。

猫の顔と日本の伝統工法檜皮葺(ひわだぶき)屋根の貴志駅
DESIGNED BY EIJI MITOOKA + DON DESIGN ASSOCIATES

たま名誉永久駅長

和歌山電鐵の親会社がある岡山で保護された、通称ニタマ。伊太祈曽駅の駅長を経て、たまII世駅長となる。普段はガラス張りの「駅長室」でのんびりと寝ていることが多い

フルーツマイスターが生み出す最高のスイーツ

スイーツ列車「フルーティアふくしま」

(福島県・JR東日本磐越西線)

桃、いちご、さくらんぼなど、福島は日本有数のフルーツの産地。創業90年以上という老舗果物企業では、フルーツマイスターが素材を厳選し、心を込めて作ったオリジナルスイーツをカフェ列車「フルーティアふくしま」へと提供している。いちばん美味しくなる時期に合わせて提供される2種類のオリジナルスイーツには、職人たちのアイディアが詰まっている。

車内で提供されるスイーツは、他の店では食べられないオリジナルメニュー。工場で、一つひとつを職人たちが手作りしている。列車とは思えない落ち着いたインテリアも魅力

恐竜たちが地域の魅力を発信

恐竜博士がホームでお出迎え

(福井県・えちぜん鉄道)

世界有数の恐竜化石の発掘地である福井県。その玄関である福井駅では、至る所で恐竜に出会える。「きょうりゅう電車」を運行しているえちぜん鉄道福井駅のホームに設置された「ダイノベンチ」では、白衣を着た「恐竜博士」が乗客をもてなしている。

「恐竜博士」は県立の博物館のキャラクター。左手には草食恐竜の骨格、右手には本を持っている