2013 No.10

これが、ジャパン・クオリティ

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安全とともに走る、新幹線

超特急列車として、日本全国の主要都市を結ぶ新幹線。
驚くべきは、速さ、運行時刻の正確さだけではなく、その安全性だ。
たとえば、東海道新幹線では、1964年の開業以来48年間「乗車中の旅客の死亡事故ゼロ」を続けてきている。そこにはいったいどんな技術やシステムがあり、どんな人たちの支えがあるのだろう。
未来へ向かって走り続ける新幹線の、安全の秘密を紹介しよう。


写真● 渡邉茂樹

緊急時に早く止まり、危険を回避する東海道新幹線の最新車両N700A(JR東海)

東海道新幹線を支えるJR東海の新幹線総合指令所

運行をつかさどる頭脳 新幹線総合指令所

新幹線の、正確で安全な運行を支える頭脳。東海道新幹線の「新幹線総合指令所」では、広い室内の壁一面に大きな表示板があり、線路と駅、列車の現在位置がひと目でわかる。遅れが出そうなときは各列車の状況を確認して調整したり、雨や風が強いときは速やかに停止させたりといった指令が各列車へと伝えられ、遅延や事故を未然に防ぐ。人の目に守られたこの管理システムがいかに優れているかは、新幹線の高い安全性を見ればよくわかる。

走るお医者さん ドクターイエロー

ドクターイエロー

線路や架線の状態を診断しながら走る、ドクターイエロー

正しくは「新幹線電気軌道総合試験車」という。新幹線のお医者さんともいえる頼もしい存在として、約10日に1度の周期で東京~博多間を走り、架線や線路の状態を調べる。車両に搭載したセンサーで設備の状態を診断し、対応が必要な場合は、ただちにメンテナンス作業に反映させる。また、一般の人がめったに目にすることができないものであるせいか、見かけるとよいことが起こる「幸運の車両」ともいわれている。

7分間のマジック 驚異の車内清掃

新幹線の車内は、常に美しく保たれていることで定評がある。4本のホームを列車が約4分おきに行き来する東北・上越新幹線最大発着駅・東京では、12分の停車時間のうち、乗客が乗り降りする時間を引いた残り時間はたった7分。その間に背もたれカバーを換え、ゴミを集め、床を掃くといった作業をシステム化し、指揮官の下、チーム力を総動員してやり遂げる。さらに清掃員がお辞儀をしながら列車を迎え、送る「おもてなし」の光景も、新幹線ホームの名物となっている。

車内清掃

考えぬかれた動きで車内を清掃するJR東日本のスタッフ。所要時間は7分間

一礼のおもてなし

終了後は、乗客へ深い一礼のおもてなし

早く安全に“止める“ 新技術N700A車両

N700A車両

2013年2月に東海道新幹線、3月には山陽新幹線で登場した、最新車両N700A。「地震ブレーキ」を新しく開発したことで、地震を察知したとき、停止までに必要な距離をN700系よりさらに短縮できるようになった。また、車両を支える台車の振動を常に監視し、ささいな故障でもすぐに見つけられる「台車振動検知システム」も搭載された。