第12話
「怖かったんです。知也さんから嫌われるのも、可奈子ちゃんの腕を壊すのも」
恵那は無表情だ。知也とは一度も視線を合わせない。なぜか、その様子が、泣きながら許しを乞う小さな女の子のように見える。
「可奈子ちゃんに、ごめんなさいって伝えてください。怒るかもしれないけど、許してください」
恵那は、可奈子が停止したことを知らないのだ。
知也は一瞬、口を開きかけ、思いとどまった。
そして、別のことを言った。
「ありがとう」
恵那は顔をほころばせた。
が、続く言葉を聞き、困惑の表情に変わる。
「でも、可奈子にはもう必要ないんだ」
知也はきびすを返した。
「さよなら」
足を踏み出す。まばゆい光を投げかけるショーケースの店に背を向けた。趣味の店がてんでばらばらに奏でる喧騒が、知也を包み、受け止めた。後方で恵那がなにごとかを叫んでいた。
今日はどこへ行こう。
東鳳堂にもしばらく顔を出していないことに気づいた。ひさしぶりにカプセル自販機をやろうかなと思った。
知也の部屋には、今も片腕のフィギュアが飾られている。
Copyright (C) Shokichi/Web Japan, English translation (C) John Brennan
2008.
Edited by Japan Echo Inc.
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