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Super Figure Kanako / Shokichiイラスト (C)玉置勉強
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第11話
それきり二人は言葉を交わさず、部屋に静寂が満ちた。
やがて、知也は可奈子が部屋の一点を見ていることに気づいた。視線の先には棚があり、知也のフィギュアたちが飾られている。もの欲しそうな子供みたいな目で、可奈子は仲間を見つめていた。
突然、可奈子が身をよじり、起き上がろうとした。
「寝てないとダメだ」
知也は言うが、可奈子は聞かない。何度ももがき、失敗し、倒れる。そのたび、知也は可奈子の体を支えた。
六度目に、可奈子はようやく立ち上がった。
よたつく足で可奈子は部屋の中央に立った。窓を背にした可奈子の姿を、冬の月光が影絵のように浮かび上がらせた。
Illustration
「ポーズぐらいとらせてよ。私、フィギュアだし」
可奈子は震える左手をゆっくりかかげた。たっぷり一分はかけ、ポーズらしきものを作る。
「こんな感じでいい?」
知也に笑いかけ、誇らしげに言う。
知也は深くうなずいた。
「ああ、完璧だよ」
本心だった。できることなら世界中を走ってすべての人々に叫びまわりたいくらいに、見事なポーズだった。
安心したように、可奈子は息を吐く。
「知也」
「うん」
「私が動かなくなっても」
続く言葉はなく、可奈子は停止した。

Copyright (C) Shokichi/Web Japan, English translation (C) John Brennan 2008.
Edited by Japan Echo Inc.