2019 NO.27

召し上がれ、日本召し上がれ、日本

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ようかん
スポーツへの効能で再評価される和菓子

撮影●小山幸彦(STUH)写真●フォトライブラリー

餡で富士山を、寒天で空を表現したという「あまのはら」。創業380年の老舗・両口屋是清が展開する新ブランド「結(ゆい)」の技巧を凝らしたようかん

小豆を煮て濾したものに砂糖と寒天を加えて煮つめ、型へ流し固めて作る「ようかん」は、和菓子を代表する存在だ。標準的なようかんは、直方体で、黒に近い濃い小豆色をしていて、ずっしりと重い。切って並べたようすは、かつての文豪・谷崎潤一郎(1886~1965)が「瞑想的」と讃えたほど艶やかで美しい。甘味が強いので、苦味のある緑茶といっしょに食べるのがおすすめだ。

ようかんは、15世紀頃に禅宗(仏教の一派)文化とともに伝わったとされ、当初は小豆と葛などをこねて蒸しあげる「蒸しようかん」だった。やがて19世紀頃に寒天を使う「練りようかん」が登場し、現在に至るまでようかんの主流となっている。材料に小豆以外の白インゲン豆やサツマイモ、クリ、カキを使うものや、流し込みの工夫で富士山を形づくるものなどもあり、全国で多彩なようかんが見られる。

練りようかんは、砂糖を多用するうえに水分が少なく長持ちするため、買い置きができる茶菓子として重宝される。また、手軽に栄養補給ができると、登山家やスポーツ愛好家にも愛用されてきた。そして近年は、スポーツをする人に特化した「スポーツようかん」まで登場した。老舗の大手菓子メーカーが2012年に販売した製品は、長時間の運動で発汗とともに失われるミネラル分が含まれる藻塩を配合。また、運動時に糖を補給すると血糖値が乱高下し、かえって低血糖につながることがあるが、体にゆっくり吸収される糖を使用することでそのリスクを抑えている。

スポーツようかんの、もうひとつの特徴は容器包装だ。運動中の補給食として活用できるよう、手を汚さず、片手でも開封しやすい包装の工夫を、各メーカーが競っている。

伝統的和菓子ようかんが、高栄養食品という顔を得て、これからも新しいシーンでの活躍が広がっていくだろう。

標準的な練りようかん。棹状のものを2~3cmに切り分けて食べる

指で押し出すだけで中身が出るので、スポーツ時に片手で簡単に食べられる

井村屋が開発した「スポーツようかん」