2019 NO.27

オリンピックがやって来る!

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パラリンピックをともに闘う

さまざまな側面から、多くの人が支援に加わるパラリンピック。
ブラインドマラソンで選手とともに走る伴走者や、用具開発で選手の能力をさらに高める企業など、
選手を身近で支える人びとを紹介する。

撮影●小原孝博

歩幅も、闘志も、一心同体で

選手 井内菜津美さん
伴走者 日野未奈子さん

伴走用ロープを手にする井内菜津美選手(左)と伴走者の日野未奈子さん

大学陸上の選手とともに練習を行う機会も多い

「ただ付き添って走るのだけが、私たちの仕事ではないんです」。そう明かすのは、伴走者の日野未奈子さん。競技中はもちろん、移動や着替えなどの競技外の場面で選手を助けるのも伴走者の大事な役割だという。練習からともに過ごすことも多く、コーチのように助言を行うこともしばしばだ。「選手が走りやすい環境を作るのが私たちの務め。助言をする時も、気持ちが前向きになる言葉をかけるよう心がけています」

現在、1500mと5000mの日本記録保持者*の井内菜津美選手のパートナーを務める日野さん。「日野さんとなら記録を伸ばせる」と信頼を寄せる。「障がいを理由に妥協しない」を合言葉に、日々練習を重ねる。
*T11クラス。2019年6月現在

競技用義足の可能性に挑む

選手 佐藤圭太さん
エンジニア 遠藤謙さん

佐藤圭太選手(左)と遠藤謙さん。競技用義足開発のXiborg(サイボーグ)社がある新豊洲Brilliaランニングスタジアムで

ロボット技術を駆使した歩行用義足の開発を長年手がけてきた遠藤謙さんが競技用の義足を作ろうと思い立ったのは、「義足ランナーが健常者記録を破れば、障がい者の人たちに勇気を与えられる」と考えたからだ。

この挑戦にいち早く手を挙げたのが、佐藤圭太選手。2016年のリオパラリンピックで唯一、日本製義足で挑んだ短距離走者だ。「地面から力をもらうような、はねかえる感じがする義足が理想」と言う。「地面を蹴った時の反発が重心の上に来ればいいのですが、選手の感覚に合わせるのは難しい」と遠藤さん。それでも選手に寄り添いながら開発を進めてきた。来たる東京2020パラリンピック。選手との共作による強みを活かし、挑む。

遠藤さんが代表をつとめるXiborg社の競技用義足

スタジアム内にはNPOが運営する「義足の図書館」が併設され、誰でも競技用義足を体験できる