niponica is a web magazine that introduces modern Japan to people all over the world.
2019 NO.26
ようこそ、日本の庭へ
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デジタルアートで表現される日本庭園
デジタル技術の発展は、日本庭園の楽しみ方を拡張する。
写真・協力:チームラボ
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『小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング– Mifuneyama Rakuen Pond』。
池に投影された映像の鯉は水に浮かんで進む小舟とともに変化して、池に新たな表情をつくり出す。
庭園の自然をそのまま活かしたデジタルアートが伝えるもの
九州の佐賀県にある御船山楽園は、50万平米もの広大な敷地と池を有した壮大な庭園である。この庭園では2015年からデジタル技術を駆使したアート展が開催されている。デジタル分野のスペシャリストから構成されているアート集団チームラボが展開する『かみさまがすまう森』である。
「広大な庭園と森の中で迷い込んで、自分がまるで何かの一部であるかのような感覚になっていくような展覧会をやりたい」との思いが形になった『かみさまがすまう森』は、私たちに新しい日本庭園の楽しみ方を教えてくれる。
日本庭園とは、庭園という限定された空間に留まるものではなく、周囲との調和によって生み出されるものであり、何代もの庭師の手によってつくり続けられるものであるため、そこには、空間も時間も境目はない。『かみさまがすまう森』では、日没後の庭園で咲いては散りゆく花々の映像を古い巨石に投影したり、小舟の動きにより動きが変わる鯉を池の水面に投影するなど、森そのものの造形を活かすことによって庭園そのものをデジタルアートにした。
デジタル技術により、自然を破壊せず、自然を生きたままアートにすることが出来るため、庭園はそのままアートとなる。自分自身が取り込まれたかのような空間の中で、暗闇に現代のテクノロジーがぶつかることで、初めて浮かび上がって認識できる自然の側面や場(空間)の魅力があるということを、わたしたちはこの展示によって再発見することができる。
日本庭園の鑑賞方法は解らなくとも、そこで感じられるものは間違いなく日本庭園を鑑賞した時と同じもの、つまり「空間に溶け込むような一体感」だろう。もしかしたら、来園する若者たちも「自然と人が一つになる」という日本的な感覚を観にきているのかもしれない。
チームラボ
2001年から活動を開始。デジタル分野のスペシャリストから構成されている学際的なアート集団。チームラボは、アートによって、人間と自然、そして自分と世界との新しい関係を模索したいと思っている。