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2019 NO.26
ようこそ、日本の庭へ
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日本庭園をつくる人
想いを汲んで調和させる、日本庭園は日本そのもの
加藤友規さん(植彌加藤造園 代表取締役社長)
京都にある明治時代(19世紀後半~20世紀前半)の代表的な庭園「無鄰菴」。指定管理者でもある植彌加藤造園の八代目である加藤友規さんは、先代の楽しそうに仕事をする姿を見て、日本庭園に魅力を感じてきた。家業を引き継いだ今は、伝統を守る責任を意識している。
庭造りの流れはその土地の気候風土を調査し、計画、設計、施工とつづく。既存の庭、あるいは竣工の後は育成管理を手掛ける。植木は一年を通して手入れが必要で、庭の雰囲気にどう合わせるかなど、庭造りには総合的な判断力も要求される。
庭師一人ができることは限られていると考える加藤さんは、人材育成にも力を入れている。庭師同士で協力し、情報共有しあうことを大切にする姿勢は、若手庭師の半田さんにも受け継がれている。
アメリカのポートランドにあるワシントン・パーク内の日本庭園の庭師への技術指導にも携わる加藤さん。「日本庭園の原則は、現地のものを使用すること。土地の気候風土に相応しい現地の植物を使いながら、自然との調和を重んじる日本の伝統を反映させていくのです」と、海外における日本庭園造りを語った。育成管理作業は、現地スタッフと一緒に手入れしながら指導するが、現地スタッフには、茶道のほか日本文化を体験し、華美ではない自然な美しさとは何かなどを学んでもらい、日本の庭造りに必要な考え方の会得につなげている。
「日本庭園は、施主や代々関わってきた庭師の思いを引き継ぎながら、何百年と育てていくものですが、海外では、新しい持ち主が改造することもあります。また、日本には他の庭園から見える景色を邪魔しないよう、近隣と協力し合う慣わしもありますが、これは日本独特の感覚ではないでしょうか」時間も空間も一続きとなって成立する日本庭園の考え方は、自然の中に身を置き、経験することで習得できると考えている。
「退化と進化をどう調整するか、日本庭園の育成管理だけでなく、若手を育成する中でも考えていきたいですね」と、加藤さんは日本庭園の未来を、柔軟に、前向きに考えている。