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2018 NO.23
召し上がれ、日本
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花寿司
心も華やかになる伝統寿司
写真●伊藤千晴 協力●花味結
海苔や厚焼き卵をくるくる巻いて切ると、華やかな花寿司が完成する
「花寿司」は、具材で花や文様を描く巻き寿司である。千葉県の房総半島では祭りや節句などの特別な日には、地元の食材を使い、花寿司を作ってきた。かつては花や文様の花寿司を作ることが多かったが、今は動物やキャラクターなどの絵柄も作られ、子どもから大人まで親しまれている。
海苔で酢飯と具材を、細く切った竹を糸でつないだ巻き簾で巻いた「巻き寿司」が作られるようになったのは、江戸時代後期(18~19世紀)といわれる。一般的に房総半島がある関東地方では細い巻き寿司、関西地方では太い巻き寿司にする。そのため、花寿司は、鰯漁で和歌山県から房総半島にやって来た漁民が伝えたのではないかといわれている。
花寿司の具材は、一般的な巻き寿司と変わらない。ユウガオを乾燥させて細く切ったかんぴょう、ほぐした魚肉を食紅で桜色に染めたでんぶ、そして干し椎茸や野菜などを用いる。また酢飯を巻くために海苔や薄く焼いた卵焼き、野菜の漬物なども使う。
作り方はいたってシンプルだ。まず巻き簾の上に海苔や卵焼きを敷き、酢飯でところどころ、山を作る。その山と山の間に具などをのせて、くるっと巻いて切ると、事な絵ができるのだ。
房総半島は海に近く、昔から海苔などが身近な食べ物であった。そして千葉県は全国でも卵の生産が盛んな地域である。花寿司を作る宮内マサ子さんは「卵をたくさん使った、厚い卵焼きで巻きます」という。花寿司は、土地の恵みをより楽しく味わうための工夫から生まれた、祝い料理なのだ。
千葉県鴨川市にある「花味結」では、実際に花寿司を作る体験をすることができる。30種類以上の巻き寿司のラインナップから好きな種類を選び、1時間程度で巻き寿司の作り方を学ぶことのできる本格的なワークショップである。花寿司は、アイデア次第でさまざまな絵柄が出来上がるので、皆で一緒に作ったり、持ち寄って食べるとさらに楽しい。