2015 No.17

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召し上がれ、日本召し上がれ、日本

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キャラ弁
描いて伝える楽しい昼ご飯

キャラ弁

協力●宮澤真理、鈴木美穂

身近な食材で動物を描いたキャラ弁。ウサギはご飯、ヒヨコはウズラ卵、顔の表情は黒ゴマやノリで表現。黒いノリは時間が経つ湿ってよれてしまうため、薄いチーズにのせて固定する

食材を使って動物や人形、アニメやマンガのキャラクターを描く絵のような弁当、「キャラ弁」(キャラクター弁当の略)。家族や友人のための弁当をより楽しくしようと趣向を凝らしてつくりあげ、日々の「作品」としてブログなどに掲載する人も少なくない。

使う食材はごく一般的なものばかりだ。ご飯を動物やキャラクターの輪郭を模して固め、黒ゴマや海藻のノリで眼や口を描く。卵で黄色、ニンジンでオレンジ、キュウリで緑と、表現したい色に合わせて食材を選ぶ。薄いハムやチーズは文字や模様を切り抜くのにうってつけだ。ご飯を固める型やノリの抜き型などの道具もまた、「絵」の完成度を上げるのに一役買っている。

弁当に絵を描くことは、何も突然に始まったわけではない。ウィンナーやリンゴをタコやウサギに見立てて切り、弁当のおかずに添えることは40年以上前から行われていたし、千葉県には、江戸時代(1603~1867)からつくられているという巻きずしで絵を描く郷土料理「太巻き祭り寿司」がある。日本の家庭料理には、昔からその伝統が息づいていたようだ。

キャラ弁の本を多数出版し、サイトも運営している宮澤真理さんの場合は、2002年から家族のためにつくり始めた弁当が、キャラ弁制作のきっかけだった。

「普通の弁当づくりに飽きた頃、ふとニンジンを花形に抜いてみたら、意外に楽しかった。それからは工夫するのが面白くなって。これならずっと続けられると思いました」

キャラ弁からは、つくり手の相手に対する愛情やエールが容易に伝わってくる。つくる方も食べる方も楽しめるコミュニケーションツール、というのが宮澤さんの持論だ。

見た目が美しければ、味もおいしい。だから盛りつけや器にも心を砕く。キャラ弁も、そんな和食の哲学の延長線上にある、新しい料理のひとつといえるのかもしれない。

弁当のふたを開ければ、子どもは歓声をあげ、大人は微笑む。キャラ弁は、日々の暮らしを楽しむための、小さな工夫の結晶なのだ。

ハム、ノリ、薄焼き卵で大人気のマンガヒーロー「ナルト」を見事に再現。黒目を大きめにするなど、キャラクターに似せるための工夫を凝らす
©岸本斉史スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ

具材で切り口に花や模様を描く千葉県の郷土料理「太巻き祭り寿司」。野菜や卵を使い、ご飯の盛り方を調整したり細い巻きずしを組み合わせて巻いたりして柄を出す。ここでも絵の線を描く画材として、ノリを多用する(写真=明角和人)

パンの上でキャンプをする子ブタたちはウズラ卵とハム製。テントは卵焼き、木々はブロッコリー、焚き火はニンジンとゴボウを炒めたキンピラゴボウでできている。お弁当のおかずになじみ深いものを使うことで違和感なく、おいしく食べられる