2014 No.12

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お菓子の国ニッポン

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日本はお菓子の国!?

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技術を開放していくことで日本のお菓子が世界に広がる

青木 日本人には、折り紙ができたり、箸を使ったりという指先の器用さ、そして味覚の繊細さという、全体的なレベルの高さがあります。日本の和食や和菓子が繊細さを出すのに対し、ヨーロッパは大胆さで勝負するところがある。だけど日本に目を向けている料理人は、引き算をすることによって繊細な表現ができることも知っていますね。

黒川 フランスのMOF(国家最優秀職人章)の称号を持つ方から聞いて目から鱗が落ちたのは、自分たちの持つ技術はどんどん開放しなければだめだということです。日本では、技術は秘伝にすることで価値が出てくるという考え方が主流だった。それをどんどんオープンにしていってこそ、日本が世界の中で生きる道もあるのだと思います。

青木 海外の人たちは、隠すよりも、見せたがる人たちなんですよ(笑)。

黒川 今、フランス人の女性で、和菓子職人になりたいという人がいるんです。和菓子をつくれるようになりたいと、日本語も話せないけれど日本に来て、一生懸命勉強している。そういう人たちを応援していきたいですね。

青木 ヨーロッパの三つ星レストランの厨房で働いている人の国籍は5〜6カ国じゃきかない。だけど日本の一流のお寿司屋さんの下ごしらえ場には外国人はいないですからね。
日本のよさをもっと海外に伝えていきたい。海外から来た人が母国に帰った時に、それが伝播していくようにしたい。日本人の持っているすばらしい技術をもっと世界に伝えることを、ぼくたちの世代はやっていかなくてはならないと感じますね。

黒川 2020年にオリンピックが日本に来ます。青木さんが提案されていて、私もぜひとも実現したいと思ったのが、洋菓子や和菓子という垣根を越えた「日本のお菓子」というものを、オリンピックの時に提供できたらいいなということです。
和菓子屋さんに行っても洋菓子屋さんに行っても、もしかしたらコンビニに行っても、そのお菓子がある。
そういうことで海外の方に、「これぞ日本のお菓子」というようなものを味わっていただけたらと強く思います。ぜひ実現させましょう。

1812年に虎屋が宮中に納めた菓子を、当時の挿絵つきの古文書をもとに再現したもの。形、色使い、味、すべてに美意識が詰まっている(写真=棚井文雄)

遠くの野山に点々と咲くサクラに見立てた、虎屋の「遠桜」。餡、白玉粉、水、砂糖を混ぜた生地で餡を包み、そぼろの餡をつける

木型でつくる生菓子「手折桜」。名前には美しい桜を手で折り持ち帰りたいという意味が込められている。「遠桜」とともにサクラの時期 にのみ販売される

左/餡にチョコレートを加えしっとり焼き上げたTORAYA CAFÉの「あずきとカカオのフォンダン」。濃厚な味わいだ
右/トーストに塗ったりコーヒーに入れたり、さまざまな食べ方が楽しめる「あんペースト」