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2018 NO.24
祭りと生きる
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日本の祭りの基礎知識
日本にある多くの祭り。
では、どのくらいの数で、どういう目的で行われているのだろうか。
祭りに詳しい芳賀日向さんに話を聞いてみました。
写真提供●芳賀ライブラリー(芳賀日向、門山隆、中田昭、下郷和郎)、ピクスタ
Q1
なぜ1年を通して多くの祭りが行われているのでしょうか。
A
日本には四季があり、命が芽吹く春には1年間の豊作や大漁を願います。蒸し暑い夏はかつて疫病が蔓延したため、邪気を追い払う威勢のよい祭りが行われています。またこの世に戻ってくる先祖をもてなす行事に因んだ祭りもあります。収穫の秋には恵みを神様に感謝する祭りが、寒い冬には1年の無事と新年の願いを込めた祭りが行われます。このように、季節の変化を神様の力を得て乗り越えようとして祭りを行ったため、1年の間にさまざまな祭りが行われるようになり、今も続いています。
Q2
どのくらいの祭りがありますか。
A
さまざまな説がありますが、公開されている祭りは約30万以上あります。日本では海や山、川などの自然から、家の台所や風呂、道端の石などにさえ神様が宿っていると信じてきました。そのため、それらの神様の数だけ祭りがあるといわれています。そのほか、神社や寺院で行われている祭り、家庭単位で行われている祭りもあり、膨大な数に及びます。また、神様も仏様も一緒に祀ったり、時には大蛇や獅子なども神様として大切に祀ったりして祭りにしてきました。
Q3
主にどのような願いを込めて行われているのでしょうか。
A
私の調査では、「神社に伝わる祭り」「豊作や豊漁を祈って感謝する祭り」「健康と安全、子孫繁栄を祈る祭り」「歴史上の人物をたたえる祭り」「平和な世を願う祭り」「先祖の霊を供養する祭り」「地域の伝統的な行事や芸能を受け継ぐ祭り」「町を元気にする新しい祭り」の8つに大きく分けられます。1つの祭りで2つ以上の願いが込められている祭りもあります。
Q4
外国からの影響や交流を感じさせる祭りはありますか。
A
例えば、1100年以上も行われている京都市の祇園祭に登場する山鉾が現在のように豪華な装飾になったのは今から約500年前です。この山鉾には西欧や南西アジアから輸入された織物などが飾られ、当時の京都の商工業者の豊富な財力や日本と外国との交易の範囲の広さがうかがえます。そのほか、長崎県のくんちという祭りでは、約400年前のオランダとの交流をうかがわせる踊りがあり、今も受け継がれています。
芳賀日向(はが・ひなた)
祭り写真家。日本国内を含め、48カ国の祭りを取材し、専門書から図鑑まで祭りに関する著書多数。